住宅新報が実施した「主要住宅・不動産会社新卒入社アンケート」(回答企業45社)調査によると、71.1%の企業が「予定通りの人員を採用できた」と回答。前年と同水準の採用状況となった。更に就職活動が早期化・長期化し、採用手法が多様化する中で、人材確保への活動は激しさを増す。一方、今年度は新型コロナウイルスの影響で例年と様相が異なる。新入社員が一斉に集まる入社式の開催が見送られるケースが目立つ。新型コロナが日本経済に与える影響度合いは予測が立てづらく、次年度の新卒採用への懸念は強い。(各社の社長訓示10、11面)
アンケートによると、「予定通りの人員を採用できた」と回答した企業は71.1%に上り、前年と同水準の7割を維持した。45社のうち26社が前年よりも採用人数を増やしたが、これは前年の採用人数を増やした企業15社(42社回答)を上回るが、新卒採用者の45社合計は6987人で前年比1.0%減だ。減少幅を踏まえると、全体では前年と同水準の採用人数といえる。
採用活動は3月1日から企業説明会などの広報活動が始まり、採用選考活動は6月1日以降、正式な内定日は10月1日以降となるが、就職活動の早期化は進む。採用の現場では「学生の動きは3年生の6月ごろからスタートしているため、就職活動が長期化傾向」「採用活動スタート時期の早期化による、人材確保の難しさ」と採用活動は難しさが増している。
更に、日本経済団体連合会(経団連)では、21年度以降に入社する学生を対象とした採用選考に関する指針は策定しないことを既に公表しており、就職活動の更なる早期化や長期化も懸念される。「経団連が採用スケジュールの指針を撤廃、政府主導で現行ルールの維持が決定されることによる、選考活動の更なる早期化の可能性が高まる中で、短期決戦かつ激しい人材獲得競争への対応が課題」という意見はシビアな状況を見据えたものだ。
インターンシップに課題も
採用手法が多様化する中、ウエートを高めているのがインターンシップ(今週のことば)だ。採用の現場からは「参加率が高まり、業界・企業研究が進んでいる」「学生の傾向としては、合同企業説明会よりもインターンシップへの参加にシフトチェンジ」という意見が挙がる。
一方、インターンシップの常態化が進めば、新たな課題も生まれる。「早期開催や実施回数増加等、学生との接点拡大に注力」と、更に注力する方向性の意見もある反面、「学生の参加社数が増えたことで『インターン慣れ』が顕著。インターン先への入社意欲・親近感が薄れている傾向にある」との懸念もある。
また、優秀な人材確保の手段の一つとして通年採用があるが、今後の課題で「通年採用がスタンダードになった場合の対応」「スケジュールや活動施策の検討」が挙がる。
業態の環境を踏まえた意見もある。「ディベロッパー業界に対して興味を抱く学生の数は増加傾向」(大手ディベロッパー)、「不動産業界の人気が以前よりも伸びているように思える。その一方で、採用側としてはこれまで競合しなかった異業種との競合も増えた」(電鉄系不動産会社)との意見があった。建築系では「全体数の少ない建築学生の採用人数の確保が課題」(ハウスメーカー)、「大学院卒技術学生の確保が困難」と業界特有の課題は残る。
新型コロナの猛威
新型コロナウイルスの猛威、オリンピック開催の延期が日本経済に与える影響は未知数であり、採用活動も予断を許さない。その新型コロナだが、終息時期の予測が立たず、次期の採用に大きな影響を与えるのは必定だ。
採用現場からは「採用計画に変更が生じる可能性がある」「広報活動が制限される中、いかに会社の魅力を発信するか」「会社説明会の中止、採用活動後ろ倒し等の実施」と懸念の声が続々と上がっている。一方では「感染対策としてウェブを利用した採用活動への移行を進めている」と、いち早い取り組みを見せる企業もある。
例年は新卒者を集めた入社式が開かれるが、今回はそうした式の開催を見送る企業がほとんど。規模縮小で入社式を開催した企業もあれば、新入社員に自宅待機を求めたり、社長の訓示がウェブや書面で発表されたり、新型コロナに苦慮している。
21年度の採用計画では「横ばい」が最も多く27社に上った。次いで「今年より増やす」が12社、「今年より減らす」が5社、未定が1社だ。比率は「増やす」が26.6%(20年度採用予想は38.1%)、「横ばい」が60.0%(同47.6%)、「減らす」が11.1%(同9.5%)、「未定」が2.2%(同4.8%)。「増やす」が11.5ポイント減少し、「横ばい」が12.4ポイント伸びている。
今後の新型コロナに終息見通しが立つかどうか、また、その時期はいつか――。その点で次年度採用の方向性や採用状況は大きく変わる。