記者A ウィズコロナ(コロナとの共生)の中で、在宅勤務が定着してきたな。
記者B 新型コロナウイルス感染症の拡大防止のためには仕方がないよ。
A 働き方改革とは働く人が個々の事情に応じて、多様で柔軟な働き方をする、というのが大前提。今の在宅勤務は多様で柔軟な選択によって行われているか!
B いら立つなよ。
A 在宅で働いていると、2歳の子供が寄って来て「パパ、遊ぼう」って言ってくるんだ。こっちの事情も分からずに……。
B 2歳の子供が状況を理解できなくても仕方がない。個室があれば、別だけど。そう言えば、在宅勤務の影響で、個室への要望が出てきているという話があったな。
A リクルート住まいカンパニーの不動産情報サイト「SUUMO」の池本洋一編集長へのインタビュー(20年5月5日号掲載=この人に聞く)の中でその話が出てきたよ。
B ある程度、締め切った空間でないと、テレビ会議システムを使った会議では、外部の声が入ってきてしまうという話だったな。
A 在宅勤務には、そういうスペースが必要だよ。
B でも、共働き世帯の増加の中で、ハウスメーカーではテレワークに使えそうなスペースを設ける間取りが多いよ。
A 在宅勤務で必要とされる集中力というか、仕事の量や質に応じて必要とされるスペース、配置は異なってくる。いろいろな間取りがあるが、オフィスと同じレベルで仕事に取り組もうとすれば、やはり個室や半個室が欲しくなる。
B でも、駅近の立地のほうが人気があるし、駅近だと、住宅の価格は高いし、賃貸の場合でもやはり賃料は高い。なかなか、ゆとりのある間取りって難しいよ。
A そこが変わる可能性があるのさ。狭くても駅近がいいというニーズは強かった。でも、立地と広さは相関関係にある。立地がよければ狭くなる、郊外に行けば広くなるという傾向はある。そこで、広さや室数を求めて、都心から離れる層が出てくるんじゃないか。
B 郊外だと通勤がきついけど。
A 都心の会社に在籍して働きつつ、郊外で暮らすために、在宅勤務や時差出勤がものをいうのさ。
B なるほど。
郊外への関心高まる
A 実際にそうした兆候が見られるという。神奈川県の藤沢市、三浦市、茅ヶ崎市、千葉県のいすみ市といった街に対して「SUUMO」への問い合わせが増えたという話だ。中古戸建ての領域で見たときに、問い合わせや反響数は2月を100とすると、3月後半から4月前半は170~250になったそうだ。
B そういう街にはどういう共通点があるの?
A 海が近かったり、自然が豊かであったり、そういう点でブランドや知名度が確立している地域。そういうエリアの中古戸建てへの問い合わせは増えているようだ。都心にベースを置きながら、もう一つ拠点を持ちたい「デュアラー」(都心と田舎の2つの生活を楽しみたい人)のようなニーズかもしれないが、自然が豊かな郊外への関心は高まっている。
B そういう問い合わせや反響は、社会情勢によって左右されるし、時代の空気を反映しているものだよな。郊外での物件購入、賃貸への入居が選択肢として浮上してくる可能性はあるな。
A 新型コロナの影響ですべてが変わるという人もいるが、人間の感覚が大きく変わることはないだろう。ただ、自分自身の住まいに対して、新たに選択肢が増えるというのは不動産業としては大きな変化ともいえる。
B それは大きいよ。
A 実際のところ、新型コロナが収束しないと分からないが、ウィズコロナで芽生えたものがアフターコロナでも残っていく可能性はある。在宅勤務はある程度、定着するだろうし、それが住まいに影響を与えていく。
B それはそうだね。
A でも、やっぱり在宅はきついよ。嫁が「なんで家で仕事してるの」って、いら立ってるんだよ。嫁だって在宅勤務してるのに。
B 2歳の子供は理解できなくても、奥さんには理解してほしいものだが……。