新型コロナウイルス感染症の影響で売り上げが減少している事業者への支援として東京都の「家賃支援等給付金」制度をはじめ、他の区市や首都圏の自治体でもオーナーやテナント事業者向けに家賃補助制度を設けている。国の「家賃支援給付金」に上乗せ支援する制度と、国より先行して独自に支援を展開した自治体がある。また、全住民向けの独自の給付金を選択した自治体もあり、各支援制度の違いを紹介する。
国の「家賃支援給付金」に上乗せする形の制度を選択したのは、東京都「家賃支援等給付金」、武蔵野市「中小企業者等テナント家賃支援金」、埼玉県「中小企業・個人事業主等家賃支援金」(テナント向け)など。この枠組みの場合は、対象要件に「国の家賃支援給付金の給付決定」が盛り込まれている。
東京都産業労働局新型コロナウイルス感染症対応事業推進担当課の徳田洋平課長は、中小企業や個人事業主の事業継続の下支えをしていく制度だと説明し、「家賃は固定費として大きな割合を占める。国の支援制度と同じく、対象期間の区切りを定めずに3カ月間としたのは、事業者ごとに売り上げが減少して大変な時期が異なるので、柔軟に対応できる制度設計にするためだ」と話した。
武蔵野市・埼玉県のテナント支援
武蔵野市「中小企業者等テナント家賃支援金」では、国の給付決定に加えて、さらに「中堅企業を除く」との要件を定めている。同制度では、中小企業者等と個人事業主では給付額が異なる。中小企業等の家賃等の総額が75万円を超えた場合は、超過分の3分の1(上限10万円)を、個人事業主は家賃等の総額が37.5万円を超えた場合は、超過分の3分の1(上限10万円)を支給するとしている。
埼玉県「中小企業・個人事業主等家賃支援金」では、8月から受付を開始するテナント向けの支援では、国の家賃支援給付金に準じた制度設計を採用している。申請要件などをそろえることで、国の給付金の審査を受けた交付通知証明があれば、県での審査を簡素でき、迅速な支給につなげることができるとしている。
先行独自型が多い東京23区
国より先行した独自の支援制度を実施したのは、新宿区、港区、板橋区、杉並区、立川市など。メリットは、国の支援制度が開始した7月よりも早く開始し、同感染症の影響で売り上げ減少に苦しむ店舗などの閉店などの事態の前に早急な支援を展開できている。
新宿区のオーナー向けの支援制度「店舗等家賃減額助成」では、対象要件に区内で家賃を減額する物件を2年以上所有していることを盛り込んでいる。新宿区文化観光産業部の楠原裕式副参事は同助成について、長年に渡って区内で営まれてきたさまざまな事業を守るための支援だと説明し、「区に根差したオーナーとテナント事業者の事業継続を支援することで、区内のにぎわいの維持につなげていく」と述べた。
杉並区のオーナー向け支援の「中小事業者の店舗家賃負担助成」は、6月18日に制度化しているが、対象期間が4.5月のため、支払い済みの場合でも「今後の返金」や「今後の家賃で相殺」でも申請可能としている。対象要件に、入居テナントが国の定める持続化給付金の給付要件に該当する中小事業者であることを定めている。また、2カ月分で1店舗の支給上限は20万円で、複数店舗の場合は店舗数分支給する。
自宅兼事務所のケースへの対応
板橋区のテナント向け支援の「小規模企業者等緊急家賃助成金」は、個人タクシーや宅配事業者等が自宅兼事務所を賃借して事業を行うなど、通常業務を屋外等で行っている個人事業主が自宅を事務所としていることが確認できれば申請対象としている。この場合は、住宅と事務所の割合が1対1(事務所の賃借料は2分の1の金額)で算定する。
立川市のテナント向け支援の「中小事業者緊急家賃支援金」は、4.5月分家賃相当額の2分の1、1事業所当たりの限度額40万円、複数事業所の場合は最大200万円を支給する。この制度も物件が自宅兼事業所の場合は、事業所部分のみが支援金の対象となる。
全住民の支援給付金
家賃助成以外では、千代田区は「(仮称)千代田区特別支援給付金」で全区民へ一人当たり12万円の支給し、品川区は「しながわ活力応援給付金」で全区民に3万円(中学生以下には5万円)を、東京都西多摩郡奥多摩町は「奥多摩町特別定額給付金」で全町民に2万円を給付している。
全住民への支給の場合は、市民間での不公平感はないが、財政への負担も大きくなる。
家賃補助にせよ、給付金の支給にせよ、支援制度がある自治体とない自治体では、どうしても格差が生まれる。都市部と地方では、どうしても家賃の差があるが、今回の新型コロナウイルスの影響は全国で等しく出ている。
地方自治体は、財政力によって施策に違いが出るが、家賃支援することで事業継続につながり、税収にも影響するとの意識が高い自治体ほど積極的に支援整備を進めていると思われる。