今年8月末時点で入会企業社数が1万社を超えた全日本不動産協会東京都本部(全日東京、中村裕昌本部長)。これまでの入会促進に向けた取り組みやコロナ禍での対応、展望などについて中村本部長に聞いた。
――1万社達成までの振り返りを。
13年の本部長就任以来、将来的な人口減少等を見据えて会員増強が次世代にとって重要と考え、取り組んできた結果だ。ステップアップトレーニングやeラーニング等の会員向けの取り組みとの相乗効果もあった。中でも、全国組織の全日で統一されている契約書と、全日東京および保証協会で取り組む研修は会員からも好評だ。
この5年間は、飲食業や金融業など異業種から参入してくる入会者の割合が増えているが、直近ではコロナ禍を背景に、不動産会社から独立して入会する動きも目立っている。
――民法改正、コロナ禍への対応は。
前述の契約書は民法改正に対応した改定版として会員に使われている。また、東京都本部にあった全国不動産協会(TRA)は今春から全国組織に拡大した。TRA内に相談室を設置し、民法改正に対応できる支援体制を整えており、民法改正関連の相談件数も多い。しかし、残念ながらコロナ禍による人員減少や時間短縮対応でフル稼働できていなかったが、今月から対応体制を元に戻し始めている。
不動産市況については、6~8月は売買・賃貸共に回復傾向ながら、9~10月はまだまだ不透明だ。会員からコロナ禍での具体的な支援要請は来ていないが、当協会としては、今後の状況を見ながら会員向けの事業を進めていきたい。
――今後の組織体制と展望について。
全日全体で3万6000社を超えた中、東京都本部はけん引役を担う覚悟だ。組織は、時代や業界、全日そのもののありように即した形で進化していくことが必要であり、会員も含めて議論を深めていく。次世代に引き継ぐことが役員の役目であり、私自身はスムーズな運営こそが会員事業者のためになるとの思いで取り組んできた。
また、中小不動産事業者が集まる当協会が業界の中でどうあるべきかを考えることも重要だ。売買や賃貸の仲介という分野においては大手の参入が目立ってきているが、同じ中小不動産事業者の集まりである全日と東京都宅地建物取引業協会が大きな視点で協力しながら業界の発展に寄与していくべきだと考える。更に、事業承継という点では、賃貸の会社が高齢を理由に廃業する場合、同じ地域内の事業者や会員同士で客や仕事の引き継ぎを行うケースもある。会員から承継対応のニーズが高まれば、当協会としても対応を考えたい。
今後は、TRAとも連携し一般社団としての特性を活用し、会員の業務に役立つ支援の充実を図りたい。また、コロナ禍では従来の視点を変えていかなければならないと思う。21年度東京都予算に対する要望書では、東京の都市づくりや住宅政策に関する提言等に加え、コロナ禍の中で中小事業者への様々な支援等の充実などを求めるよう要望する方向で検討している。