売買仲介

すむたす 売主向け新サービス「ウレタ」 価格目線で依頼先選びを 仲介と買取の二価をAIが同時算出

 不動産テック企業のすむたす(東京都港区、角高広社長)は9月24日、マンション売却希望者と不動産会社をマッチングする新サービス「ウレタ」の提供を開始した。マンション売却時に「高く売却する」仲介価格と、「すぐ確実に売却する」同社の買取価格をAIが同時に算出するもので、同社によるとこの仕組みは業界初という。ユーザーは、2つの売却価格を踏まえた上で、売却検討および依頼先の選択が可能となる。

 IT技術を活用して業務やビジネスを変革する「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の拡大と共に新型コロナの感染拡大を契機にした消費行動の変化が顕著だ。

 同社は、すぐに売却したい人向けにAIが算出した買取価格を元に最短2日で中古マンションを買い取る「すむたす買取」を18年10月から提供し、これまでに3000件、総額1000億円のマンション買取査定を実施。19年8月には手数料完全無料でリノベマンションを購入できる販売サイト「すむたす直販」を始動。不動産業界のDXを推進し不動産売買をより手軽に行える環境を提供してきた。一方、同社は多様化するライフステージの中で、仲介会社が既存住宅の売却に携わる場面では電話やFAX、対面を中心とした対応で最もDXが遅れているとして、「ウレタ」の開発、提供に至ったという。

 「ウレタ」は、マンション売却を仲介会社に依頼した時の予想買取価格とすぐに売却する時の買取価格をAIが同時に算出するもので、同社が開発した価格査定アルゴリズムを活用。売却希望者は、売りたいマンションの名前、郵便番号、広さなど7つの情報を入力すると、物件が所在する地域に詳しい仲介会社を経由して高く売却した場合の買取予想価格とすぐに売却する場合の買取価格を知ることが可能。即時売却の場合は最短2日で入金される「すむたす買取」となる。利用料は無料。同社は同サービスに参画する不動産会社からの掲載費用と、自社で買取再販が成立した際の費用で収益を上げる。

ベータ版で手応え

 角社長は「従来の一括査定と違い、AIと不動産専門家を組み合わせた仕組みにより、1時間程度で適正価格を査定できる。サービス利用時には個人情報が不要なため、不動産会社から営業の連絡も来ない。物件エリアに詳しい不動産会社から売却相談する会社をじっくり選べる」と説明。仲介会社も、マンション売却仲介において金額査定業務をDX化でき、より効率的な業務が可能となる。予想金額を確認した売主のみが申し込むようになるため、真剣度の高い顧客獲得につながる。

 同サービスのベータ版には仲介会社50社以上が参画。参画企業の価値住宅・高橋正典社長は、「ウィズコロナ時代では、非対面でユーザーと多くの売却プロセスが進む『ウレタ』は、不動産領域のDXの中心を担っていくサービス」と指摘。ハウスプラザの笹田泰貴本部長も「既存の一括査定サービスでは本質的な顧客価値に直結しないアクションが多い。査定価格時点での他社との競争といった現場の負担を解決する」と評価した。利用者からも「初めてのマンション売却だったが、純粋に売りたい条件で売却先企業を選べる点がストレスフリーだった」や「スマホを使って、高く売る売却価格も早く売る買取価格も1時間程度で査定してもらえた」など、サービス利用の手軽さや気軽さを評価する声が聞かれた。

 東京23区で提供を開始。企業が参画次第、順次対象範囲を拡大する。22年3月末までに参画企業300社、売却成約件数600件を目指す。