20年6月に神奈川県宅地建物取引業協会の会長に就任した草間時彦氏(写真)。コロナ禍の中での会員支援と協会改革を推進する。就任から1年経っての振り返りと、今後の展望について聞いた。
――1年目の振り返りを。
一度目の緊急事態宣言が20年4月に発令された後での就任となった。新型コロナという未知のウイルスに対し、会員、役員、職員の命と健康を守ることを最優先に考え、「感染防止対策ガイドライン神奈川県宅建協会版」を作成したのが最初の取り組みだ。
会長立候補の所信表明から6つの抱負を掲げ、協会運営に努めてきた。具体的には(1)会員の立場に立った協会運営、(2)入会促進の強化、(3)研修事業の充実による会員の資質向上と消費者保護、(4)宅建士資格試験の適正な運営、(5)事業効率化・経費削減、(6)財務基盤の検証等による将来の方向性の検証だ。PDCAによって進ちょくを確認し、2年間で必ず実行する。
――会員の加入状況と、取引を取り巻く環境について。
現在約6700社が加入している。20年度は新規加入も増え、入会促進活動の手応えを感じている。役員などの平均年齢も下がり、会員企業の代替わりや事業承継は進んでいる印象だ。各支部でデジタル化対応のための研修を開くと、年配の方の参加も多いが、退会抑止につながるよう寄り添う会員サポートが今後も必要と考える。
20年4月に施行された改正民法は、賃貸借における保証の極度額や売買における契約不適合責任など日々の不動産取引に直結するものだ。研修事業や広報活動などの事前対応と、会員の熱心な取り組みにより、目立ったトラブルの報告は受けていない。また、6月15日に全面施行された賃貸住宅管理業法については、早い時期から業務管理者への移行講習や指定講習を周知してきており、登録義務のある会員の対応は着々と進んでいると思われる。引き続きサポートをしていく。
――不動産テックやIT重説への対応は。
コロナ禍では人と人との接触を避ける対応と共に、生活様式や働き方、事業環境に大きな変化が見られている。そんな中、デジタル活用が大きく進展したのは間違いない。当協会ではウェブ会議やウェブ研修を推進。県内18支部に対し、Zoomのアカウント取得を促してIT重説の啓発なども行った。ウェブ研修の強みは、移動の負担や会議資料などの印刷・配送作業を軽減し、ペーパーレス化にもつながる。いつでも、どこでも受講できるため、これまでの集合研修では参加しにくかった一般従業員も参加しやすくなる。取引業務の平準化となり、消費者からの信頼獲得にも寄与するはずだ。
今国会では重要法案が成立している。相続登記や住所変更時の登記義務化など、所有者不明土地対策の転換点と言えるかもしれない。「不動産ID」との関連付けなども進めば、空き家解消につながっていくものと期待している。
デジタル改革関連法も成立し、重説や書面交付の手段が広がることになる。宅建業法の改正による押印廃止、電磁的方法での提供が可能となれば電子契約と共に取り入れる会員は増えるだろう。高齢化の波もあり、宅建業者の対応も二極化すると思われるが、事業の効率化、ビジネスチャンスと捉え、積極的に推進していきたい。
全宅連でもウェブ書式システムを作成した。現在、「ハトサポ」内のウェブコンテンツに新流通システムを導入することが決定しており、電子契約システムの提供についても検討を進めている。神奈川県宅建協会としては、これら全宅連が整備したインフラやツールを県内会員がいかに使っていけるか、知らせていけるかが重要だと考える。ハトマークがワンチームで補完し合うことで、10万組織のスケールメリットを会員も消費者も得られるはずだ。