住まい・暮らし・文化

在宅プランに商機あり 注文住宅 床面積・配置生かし訴求

 緊急事態宣言が9月30日に解除された。昨年4月から断続的に発出された宣言下で在宅勤務が一般化し、それに伴い、住宅商品ではテレワーク対応のプラン提案が活発化した。また、在宅の長時間化に対して「プラス1部屋」といった要望もあり、外部からのプライバシー保護の重要性も思い出させた。コロナ下のプラン採用を踏まえ、注文住宅の動向を見てみたい。(古賀和之)

 コロナ下での在宅勤務の推奨により、住宅購入検討者のテレワーク対応プランへの関心は急激に高まった。プランごとの採用率はカウントしないケースが多いが、メーカー担当者は手応えを感じている。

月100棟超の受注も

 大和ハウス工業東京本社住宅事業本部事業統括部事業戦略グループ主任の佐藤文氏は「家で仕事をする際に、書斎が欲しいという声はあったが、床面積の関係で採用されないケースが多かった」とコロナ以前を振り返る。

 同社は20年6月から、テレワークスタイルとしてクローズド空間「快適ワークプレイス」と、セミクローズド空間「つながりワークピット」のプラン提案を開始した。両プランは分譲を含めた新築戸建ての受注目標として月100棟を掲げた。ライフスタイル提案は顧客に浸透しづらい面があり、高いハードルだったが、今年2月にその目標を達成した。発売以来の契約数は21年8月までで約1300棟。注文は6割を占めており、プラン提案として好調な実績だ。注文のみで100棟を達成した月もあるという。

 不採用のケースを分析した際に、床面積の問題が改めて浮上。今年1月にプランを拡充した。クローズド空間にコンパクトタイプを追加。セミクローズド空間はドアを閉めれば、個室となる仕組みだが、程よく仕切られたコーナータイプを追加した。

 更に「マルチユーススペース」も追加した。これには階段下の収納空間等をテレワーク仕様とするタイプと、収納スペースに可変できるタイプの2つがある。2月以降の受注100棟超は分譲の貢献だけでなく、床面積への対応が奏功した。佐藤氏は「テレワーク対応は普通になってきた。坪単価もそれほど上がらない」と説明する。

 オフィス床面積の縮小傾向を踏まえ、佐藤氏は「会社のデスクに置いていたものを自宅に持ち帰り、しっかりと収納するケースが増えるのでは」と展望する。1月のプラン拡充では、クローズド空間のドアに外から鍵を掛けられるオプションも用意した。

 一方、ミサワホームは注文の約7割の顧客が在宅ワークスペースを採用している。1月発売の企画タイプ「スマートブランドWS」は、3つのワークスタイル提案をはじめ、ニューノーマルでのニーズを数多く取り入れた商品であり、年度目標の200棟に対しておおむね計画通りの販売状況という。旭化成ホームズも在宅ワークスペースへの顧客ニーズの高さを実感し、提案に注力している。

2階リビングの訴求へ

 一方、旭化成ホームズでは、3階建ての受注が底堅いという。コロナ以前の19年度と同じペースであり、首都圏では、東京は微減だが、神奈川、埼玉、千葉では19年度より受注棟数が増えている。営業推進部商品・仕様グループ長の安藤越氏は「3階建ての受注単価は大幅に増えている。プラス1部屋のニーズがあり、都心にも通える東京の周辺で住まいを広めに求める傾向が出てきているのでは」と推測する。

 また、重量鉄骨2階建ての受注も伸長している。20年度の受注は延べ床面積55坪以上で前年比の約2倍、同70坪以上で約3倍に増加。21年度に入り、同55坪以下を含めた全体では20年度の1.8倍のペースで受注している。同社の重鉄2階建ては同35坪以下がなく、大きめの物件だ。コロナ下で旅行やレジャーに使う資金を住宅購入に上乗せしていると推測される。

 着目点の一つに2階リビングがある。戸建て全商品では2階リビングの採用率は30~40%だが、この数年の重鉄2階建てでは約55%が2階リビングだ。東京、神奈川を中心にその比率が高い。

 コロナの直接的な影響の有無は分析しづらいが、在宅時間の長時間化を踏まえ、2階リビングは外部からのプライバシー保護の要望にも合致する。安藤氏は「重鉄の2階リビングの評判が非常によい。今後、プロモーションを強化したい」と説明した。

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 今後のプラン動向の予測は難しい。新型コロナの収束、それに伴う企業の出社状況が読めないからだ。企業のコロナ後を見据えたオフィス戦略は出社とリモートワークを組み合わせたものが多く、サテライトオフィスの普及も気になるところだ。今後、企業サイドのオフィス戦略に応じて新たな商機が生まれると思われる。