今年は住宅・不動産業界にとって大きな変革の一年となる。まずはDXの推進だ。電子帳簿保存法が施行され、電子取引の取引情報の保存方法などが変わった。これまでの常識が通用しなくなる。猶予期間が2年設けられているが早急な対応が必要だ。
そして、遅くとも5月までにはデジタル関連改革法に伴う改正宅建業法が施行される。不動産取引に必要だった重要事項説明書、契約書、取引態様によっては媒介契約書について、これまで書面つまり紙による交付しか認められなかったものが、電子的交付が認められる。また、重要事項説明書と契約書については、宅建士の記名・押印が必要だったが、このうち押印が不要となる。既に内覧などはVRで行うなど、集客や重要事項の説明まではオンラインで実現できていたが、重要事項説明書や契約書の交付などについては書面交付が課せられ、いわゆる最後の〝ワンマイル〟が遠かった。今回の改正により、集客から契約までの完全オンライン化が実現され、業務の効率化が一層進む。懸念されるのは、電子化に伴う取引の安定性だが、これまで社会実験を繰り返し行ってきたIT重説で出現した問題点などを解消してきている。電子契約を進めていく事業者も増えていくだろう。
マンション管理の分野では、「マンション管理計画認定制度」が本格始動する。管理適正化推進計画を作成した地域で、マンションの管理計画が一定の基準を満たす場合に、管理組合が地方公共団体から適切な管理計画を持つマンションとしての認定を受けることができる制度だ。想定通りに機能すれば、立地やブランドなどで市場評価されている現状から、管理面も含めた市場評価になり、自主的な管理の適正化につながる。ただ、認定を取るには、管理組合での決議が必要になり、5年ごとの更新が必要になるなどハードルも高い。管理組合のメリットなどをもっとアピールする必要がある。
今年、最も大きな法制度の改正といえば、「成人年齢の引き下げ」だ。4月1日から成人年齢が20歳から18歳になる。2月から3月までの繁忙期に締結する多くの契約はこれまで通りだが、4月1日から大学生は成人となり、対応も異なる。もちろん成人となる若者への消費者教育が重要だが、事業者としても契約が取り消せないことを示すなど真摯な対応が求められる。早速、全国宅地建物取引業協会連合会の坂本久会長は、「若年層向けに取引啓発を行う」という。業界自らの率先した姿勢は評価したい。
新型コロナについては更なるワクチン接種、新しく承認された飲み薬など対抗策も増え、なんとかアフターコロナに向けた道筋が見えてきていたが、再び第6波の影がちらついてきた。オミクロン株への対応などコロナ対策と共に、業界が直面する様々な課題を我々も検証していく。