AI(人工知能)契約審査クラウドサービス『GVA assist』(ジーヴァアシスト)を運営するGVA TECH(東京都渋谷区)は、『〝AI・データ契約ガイドライン〟作業部会メンバーから学ぶデータ契約の基本』と題して、データに関わる契約書作成時のポイントなどを解説するセミナーを4月に開催し、ウェブで配信した。
同社では、動産や不動産とは異なり、「無体物」とされる「データ」の法的な性質を正しく整理して把握し、契約書を通じた「保護」を図ることが、これからのビジネスで重要になると強調している。
そこで今回、18年6月に経済産業省が発表した「AI・データの利用に関する契約ガンドライン」の策定で検討会作業部会に携わった、講師で尾城法律事務所(東京都中央区)代表弁護士の尾城亮輔氏が解説し、「民法206条(所有権の内容)から〝データ〟は〝物〟ではないため、所有権の対象とならず、法的な保護が弱い。そのためガイドラインでは、利用権限に関して契約で明確化し、コントロールのできる事実上の地位にある場合には〝債権的な地位〟を与えると定めた」と法的な背景を紹介。その上で、「NDA(秘密保持契約)と違い〝データ契約〟は、第三者開示や目的外利用の禁止、対価の支払いを定めるなど、データの〝取引〟自体に主眼を置く。データを単に集めても数字の羅列であって、意味はない。データの集合を分析し、貸倒れ予測率などを導く〝数式〟などの新たに〝意味のある形〟に変えることで、価値が生まれる。この〝派生データ〟が契約上の争いの原因になりやすい」と説明した。
争いを防ぐため、「データは、物権として保護されないことを忘れない。競合他社にデータが渡って致命的な失敗をしないよう、予想されるリスクを事前に検討する。利用権限や使用許諾の条項を入れて、しっかりと当事者間で取り決める。契約の終了要件を定め、問題を先送りしない思考もポイント」と解説した。