EV(電気自動車)専用充電器の整備が、戸建て住宅やマンション、オフィスビル、商業施設などに広がり始めた。先進各国が〝脱炭素社会〟を目指して、30年代までのガソリン車の新車販売禁止を打ち出した政策に呼応している。こうした背景に、21年度の経済産業省によるマンション部門の補助金採択で、提供するサービスが6割のシェアを占めたユアスタンド(横浜市中区)は、これまでに首都圏や中部、関西エリアを中心に、150棟以上のマンションでEV充電器の導入と運用を支援している。
EVの普及に、自動車メーカーが力を入れ始めている。トヨタ自動車は30年までにEV30車種を投入し、レクサスブランドはEV専用にする。その普及を支えるEV充電器の整備が急務となり、海外では既に、法制度の面からも設置導入を後押ししている。
EV充電器は、最も多い自宅や職場に設置する「基礎充電」や、商業・宿泊施設での「目的地充電」、高速道路などでの「経路充電」に分かれる。設置機器が比較的安価な「通常充電」と、高額な「急速充電」の方法がある。
ユアスタンドは基礎充電の領域で、さまざまなメーカーの通常充電器に対応する独自開発の「利用者向けアプリ」と、不動産管理会社や物件オーナーなどの「管理者向け運用システム」を提供。EV充電器の導入運用を支援している(イメージ写真)。設置に際して、同社は手数料とシステム使用料を得て、管理組合などの設置者が残る利用料金から〝収益〟を得られる仕組みとしている。
分譲マンションの導入では駐車場の共用部の分電盤を使うために、利用しない居住者にも金銭的な負担となり、合意形成が難しい。そこで同社システムは「従量課金制」で使った人が使った分をカード決済で支払う。分電盤の容量を超えない範囲で〝輪番〟のように次々に充電。電気容量設定をアップさせる必要がない。「予約機能」と合わせ効率的に各車両を充電できる。
新築や既築のマンションでの導入が多く、コインパーキングや月極駐車場からの問い合わせも増えている。初期費用を掛けられない設置検討者向けには一定要件の下で無償設置プランと買取プランを用意する。設置に伴う相談に応じ、補助金申請も支援する。
選ばれる物件に
同社執行役員のデニス・チア氏は、「EVの普及に伴い需要が高まるEV充電器の設置は、先行投資でもあり、マンションの資産価値を高めて〝選ばれる物件〟になる。認知度を高め、オフィスビルや各社の営業拠点、商業施設や宿泊施設での導入支援にも力を入れたい」と話している。