積水化学工業(セキスイハイム)の「戸建スマート&レジリエンスまちづくり」がグッドデザイン賞を受賞した。化学メーカーならではの環境や防災への対応、エリア特性を読み解いた独自のまちづくりガイドラインが評価されての受賞だ。今回の取り組みについて、同社住宅カンパニー住宅事業統括部分譲事業推進部課長の堀内雄太氏に話を聞いた。
――事業概要は。
「『スマート&レジリエンス』を標準仕様とした戸建て分譲地に、当社独自の『まちなみデザインガイドライン』を加えたもので、セキスイハイム50周年記念プロジェクトとして立ち上げました。スマート仕様としては、高気密・高断熱の躯体性能に、太陽光発電システム、蓄電池、HEMSの3点セットを搭載。分譲地内の全棟をZEH仕様としました。国内の建売住宅のZEH化率は現在2.6%ほどの中、当社の建売住宅では99%(21年度実績)と特に力を入れています。また、特に土地のレジリエンスに注目し、雨水を地下に一時貯留・浸透させる『クロスウェーブ』や、断水時に数日分の飲料水を確保できる飲料水貯留システムなどを採用。化学メーカーならではのインフラ技術により、近年多発している豪雨災害にも強いまちを目指しました。同ガイドラインは、まちの特性に合わせて外構や植栽ルールを定め、地域の樹木などを取り入れることで、新しいまちを地域になじむデザインに仕上げるものです。地域住民を招いてまちびらきイベントなどを行っている分譲地もあり、『60年・長期サポートシステム』と併せて、サステナブルなまちづくりを目指しています」
――開発で苦労した点は。
「ZEHや土地のレジリエンスも含めフルスペックに近い内容なだけに、まず販売現場の理解を得ることが重要課題でした。社内説明会等での丁寧な説明・浸透から始めることにより、仕様・設備を含めた分譲地の価値をお客様にきちんと伝えられ、販売につなげることができました」
――入居者の反応は。
「現在、ありがたいことに計画を上回る勢いで販売が推移しています。入居者アンケートでは、9割が『環境と家計に優しい暮らし』に魅力を感じ、7割が『自然災害に対する土地の安心感』を重要視されています。スマート&レジリエンスが評価された結果だと思っています」
――今後の展開について。
「当社の分譲事業は、まちづくりを通して社会や環境へ貢献するという理念を持っています。今回の取り組みは、分譲地がエリアの防災拠点として機能する可能性も含め、地域社会やひいては社会環境に資するもの。今後も多くの分譲地で展開する予定です」
【仕様】■主体構造/鉄骨住宅もしくは木質住宅 ■住宅設備/太陽光発電パネル、HEMS、蓄電池、快適エアリーもしくは新空気工房 ■分譲地設備/クロスウェーブもしくはコンパクト雨水浸透マス・有孔管、屋内防犯パッケージ