売買仲介

不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(44) ~畑中学 取引実践ポイント~ 素人には分からない専門性 現地査定は難しく考えず「価格査定(2)」

 前回の(1)机上査定から続き、今回は(2)現地査定の話になる。ポイントは、(2)現地査定では現地を隅々まで見て「売主と買主が納得同意できる価格の根拠」を見つけることだ。現地査定はこの要素でプラス50万円、この要素でマイナス20万円とやっていくものと言われているが、筆者的には売主・買主とも売買判断に強く影響する要素でなければ「そうなんですね」で終わるのでそこまでやる意味がないと思う。それよりも売主と買主の売買判断に強く影響しそうな数点に抑えて価格増減とその根拠を見ていった方が効率は良いだろう。

 なお、不動産の売買判断に影響する要素には、(1)契約に結び付く、(2)価格に結び付く、(3)トラブルに結び付く、(4)どちらにも関係しない、この4つの要素がある。その中で(2)につながるのが、新しさ、室内の綺麗さ、外観などの見た目、明るさ、眺望、立地、周辺環境といった誰にでもその良さが分かる要素だ。「新しく綺麗なので住みたい」「この眺望なら買う価値がある」「こうすると利用しやすい」など、プロ目線よりかは素人目線で感覚的に判断できる要素だ。これらが好印象ならば、机上査定額よりも高く価格を付けても問題ない。

 一方で防音や遮音といった機能性、設備機器、管理状態など専門的知識が必要な要素は(1)や(3)には影響あるが、あまり(2)には結びつかない。買主がその価値を計るのが難しく、説明をしてもピンと来ない人が多いからだ。このように、どのような印象を持たれるかで価格は左右されるので、現地査定はそう難しく考えずともよい。

 具体的に建物は買主から見て住みたい(利用してみたい)と思わせるものがあるか、安全面や機能面などから問題なく利用できるのかが主な2点で、具体的には広さ、綺麗さ、構造や機能面を中心に万遍なく見ていくことになる。その中で「これぐらい綺麗ですとリフォームせずに済めますね。リフォームで対応するなら80万円は掛かりますよ」と売主と買主が納得する数字や具体性のある根拠を拾っていく。特に建物の破損や設備の故障などを修繕する費用感はリフォーム会社などに聞いて把握はしておきたい。また、建物が汚すぎて住みたくない、傾いていて利用できないとなると、建物評価はゼロか解体費が必要なのでマイナスとなる。土地なら問題なく利用できるかが重要で、形状や周辺との関係、高低差、境界の有無、残置物はないか、地面下はどうなっていそうかなどを見ていく。形状が多角形で利用しにくい、逆に正方形で利用しやすいなど、売主買主ともに納得しやすい価格根拠を拾っていく。

 価格の増減幅はその時の相場内であればそこまで厳密でなくとも大丈夫だろう。買主が購入したいと思わせる要素があれば、相場の上限でもスムーズに成約になると思う。

【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。

 2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。