販売活動に入る前には、宅建業者と売主の双方とも買主(検討者)に「見に来てもらうため」、「買っていただくため」にその準備を行う。
その中で宅建業者の準備として集客、案内、クロージングの3段階に分けて(1)情報収集、(2)広告作成、(3)案内資料作成、(4)資金計画イメージ作成、この4点をしていくことになる。
その中でも(1)情報収集は売却の可否につながる重要な要素であり、また誤った情報を買主に伝えるとトラブルになるので、時間が掛かっても正確な情報を集めていくようにする。具体的には売主への物件情報のヒアリングを行い、購入時の資料を確認(またはコピー)、物件状況確認書(告知書)、付帯設備表を使っての現況確認(記入いただく)、物件の写真撮影をして、不明点を市区町村役場への再調査で明らかにし、ヒアリングした情報を書類で精査していく。一戸建てなら修繕履歴、アパートなら加えて賃貸借契約書なども拝見しておきたい。マンションの場合は管理費等を調べるために「管理に係る重要事項調査報告書」を管理会社から取得しておくと良いだろう。買主が知りたい情報はできるだけ集めておく。
続けて集めた情報をベースに(2)広告を作成する。ネット広告、レインズ、物件概要書(チラシ)の作成となる。ネット広告は巷で言われているとおり掲載する情報量が多いほど問い合わせが増える傾向が高い。買主の知りたい情報が1つでも多い方が安心して問い合わせができるのかもしれない。そのため買主の購入判断に影響しそうな情報は漏らさず記載しておいたほうが良いだろう。
(3)案内資料の作成とは、買主の質問等に答えるために自身で持つ案内資料と、買主が購入検討するための資料の作成だ。前者は物件概要や購入時のパンフレット、付帯設備表、管理規約、管理に係る重要事項調査報告書などをipadでデータ、もしくはクリアファイルにペーパーで入れておく。買主からの想定質問集を作成して入れておくのも良いだろう。後者は主に購入時の物件パンフレットのコピーなどだ。「ネットで広告を見てもらえば十分ではないか」という話もあるが、様々な面で物件情報に触れ続けることで購入意欲が高まる面もある。買主が内見で購入しないと判断していない限りは、「お邪魔でなければお持ち帰りください」と案内資料を渡しておいても損はないだろう。
諸費用を含めた(4)資金計画イメージは作成しておき、買主からの質問への回答、もしくは資料として渡しておきたい。購入にはどの程度費用がかかるのか、具体的な金額を知ると購入に向けてより具体的に考えるようになってくる。これらの準備を整えてから販売活動に入りたい。
【プロフィール】
はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。
2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。