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大言小語 「能力創発」

 若者世代の転職や学生の就職活動で重視する主要キーワードでは「ブラック企業」「働き方改革」が挙げられる。

 ▼低賃金で長時間労働は言うに及ばず新型コロナ禍で覚醒したリモートワークという働き方に否定的な会社も「お呼びでない」と早々に会社を離れる若者は今や珍しくない。ブラックは昭和からあって今に始まったことではない。当時はサービス残業や休日返上が当たり前でモーレツに働くことが美徳とされた。

 ▼ただ、モーレツに働くことは悪いことではない。一定の時期にモーレツに働くことが『能力創発』に欠かせないとの見方もある。受験期にいくら勉強しても偏差値が上がらない、点数が伸びずに腐りたくなる気持ちに負けず諦めず続けていると偏差値が急に上がった、点数が急に取れるようになった、という経験をした人も少なくないだろう。昭和のモーレツ世代の人に聞けば「仕事も同じだ。ずっと成果が出ていなくてもある程度の時期に来てトーンとできるようになる。これが能力創発だ」と話す。

 ▼一方で、能力が低いのにやらないでいると成長はない。「能力創発」が生まれない働き方は損失につながる。実力が伴わない段階で生成AIに依存しすぎると、生成AIがなければなにもできなくなってしまう。もっとも、QOL(生活の質)も重要だ。今号「ひと」で登場の竹内氏は「ブラックか否かは報酬との連動で考えるべき問題でもある」と指摘する。