総会議事録と長期修繕計画表は売主や管理会社から入手できるのであれば入手し読んでおこう。
総会議事録はマンション(区分所有住戸)内で何を検討しているのか現時点の課題が分かり、長期修繕計画表は修繕積立金の金額の妥当性と今後どのように金額が増減していくかが分かるはずだ。そうすれば買主から「管理面で何か問題がありませんか」「修繕積立金は今後どこまで上がりますか」など質問があっても多少なりに回答ができるし、もしくは買主の不安を解消するアドバイスができるようになる。信頼できる営業パーソンとなるために知っておいた方が良い情報と言えるだろう。
ただ、一方で現実のネガティブ面を強く伝えると買主が購入を敬遠することもあるので注意が必要だ。筆者の実例。築年数が古い20数戸のマンションを検討客に案内したところ、部屋とマンション全体が想定以上にきれいだったため購入に前向きとなった検討客が立ち会っていた売主に尋ねた。
「失礼ですが、築年数が経っているのに新築と同じぐらいきれいなマンションを初めて見ました。管理会社がしっかりしているからですか?」との問いに売主は嬉しそうに「そうとも言えますが他にお住いの皆さんが維持管理に熱心だからですね。理事は3~4年で1回周って来るので私も何回もやりましたけど、他の理事達と休日も使ってクタクタになりながら1日中議論したりしたこともありますよ。その結果ですかね」と答えた。その瞬間あからさまに検討客のトーンが下がったのだが後の祭り。後日検討客からは「仕事が忙しく休日はしっかり休みたいので……」と断りの連絡があった。
事実を伝えるのは必須だが、あまりマイナス面が強調されないようにプラス面も合わせてバランス感覚を持って話をした方が良いだろう。またプラス面は強く、マイナス面は控えめに伝えるのも手だ。
総会議事録は数年分を預かり(1)管理費・修繕積立金などの費用の増減、(2)修繕工事の予定や実施の確認、(3)区分所有者(間)のトラブル、(4)管理規約や使用細則の変更などお金やトラブル、管理面のルールについて何が検討されているかを見ておく。買主の購入意思判断に影響する内容は重要事項説明書に記載するのはもちろんのこと、買主へは事前に伝えておこう。
長期修繕計画表は総工事費と長期修繕積立金の総額がどのような推移で帳尻が合うのかを見る。収支計画グラフがあれば容易に確認できるが、そうでないなら表の下欄にある工事費と修繕積立金の推移と総額の数字を見比べて増額はあるのか、増額がないなら不足しないかを確認する。不足する場合は借り入れや、一時金徴収で対応なのか、その辺りも議論されているはずなので、総会議事録も合わせて確認しておきたい。
【プロフィール】
はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。
2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。