不動産取引のスケジュール感をあらかじめ伝えておくと、顧客も「この時期が忙しくなるな」と予想ができ、時間が空くように調整してくれて、手続きがスムーズに進められるようになる。
また、丁寧に対応していただいたと好評価になり、次の依頼にもつながりやすい。つい業務で不動産取引を行っていると、顧客は仕事などで忙しく平日の時間が取りにくいことを忘れがちになる。「先に伝えていただければ……」と顧客から言われる前に、意識して顧客に不動産取引のスケジュール感を伝えておき、頭の中でイメージしてもらう方が得策だ。
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一般的には媒介契約から売買契約までは1~3カ月。これは販売(購入)活動次第なので読みづらいが、売買契約後は手続きなのでスケジュールがある程度読める。
売買契約から引き渡しまでは融資があるなら2カ月程度、現金での売買なら融資手続きがない分短縮され1~1.5カ月程度が一般的だ。あとは顧客と相談をしながら、各手続きに掛かる時間を想定しスケジュール感を把握していく。
顧客では(1)引っ越し準備、(2)室内外の整理、各種手続きでは(3)確定測量、(4)解体工事、(5)リフォーム修繕工事、この辺りが主に時間が掛かることだろう。
特に(1)と(2)は顧客が長年住んでいて物が多い場合、また体が動きにくい高齢者の場合は時間が掛かると踏んでおく。築年数が古い一戸建てなどは要注意で物が次々に出てくる。
顧客にかなり気張って(1)(2)の準備してもらわないと2カ月弱では済まないので、顧客と相談をしながらスケジュール感を決めていこう。感覚的にはプラス2カ月程度を想定しておく。
(3)は30坪程度の土地で3カ月はかかる。売買契約前に確定測量が済んでいなければ、土地家屋調査士に聞いてスケジュールを把握しておこう。売買契約後に取り掛かるのであれば引き渡しは4~5カ月後ぐらいと見ておく。
(4)は工事に入ってから2~3週間は掛かるので更地渡しが条件ならプラス1~2カ月とする。
(5)は工事内容にもよるので建設会社からスケジュール感は聞いておこう。
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スケジュール感を伝える目的は「顧客にこの時期にこのような動きをしてもらう」ことを理解してもらうことだ。そのため顧客に伝える際は「融資審査が承諾となったら融資を受けるために必要書類を準備してほしい」「買主の融資が通ったら、引っ越しの準備を始めてほしい」など、スケジュールに加えて、各条件と合わせてどのような行動をしてほしいか、具体的に伝えておくと分かりやすくて良いだろう。
【プロフィール】
はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。
2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。