第20回で不動産の案内方法について触れたが、今回は案内時の各シチュエーションでどう判断をした方が営業としてベターなのかを考察をしてみたいと思う。
前回も書いたが案内では、(1)「不動産を買主に興味を持ってもらう」→「購入する方が利益があると思ってもらう」→「購入申込書をもらって売買契約へ進む」という一連の過程があり、それを具体的な行動に落とし込むことが必要になる。(2)また。過程において買主に「あなたのサポートがあったので売買契約まで進んだ」と感じてもらわないといけない。営業担当者として存在価値を示す行動が不可欠だからだが、そうしないと単に営業担当者は不要=不要の仲介手数料を支払う原因、となるので排除されやすくなる。
この(1)と(2)を前提とすると、営業担当者としては「買主に不動産を購入してもらう」ため、「不動産に対する興味や利益を刺激する言動を積極的に取らないといけない」という結論になる。これで案内時の行動の基本方針が定まる。
そこで(1)待ち合わせ、(2)案内と説明、(3)アフターフォロー時の各判断となる。
待ち合わせは物件の現地でもどこでも構わないが、それまでに買主の情報(特にどの点に不動産に対する興味や利益を感じるのか)を入手できなかった場合は、待ち合わせから案内時までに入手しておきたい。その方が効率の良い案内ができる。事前にヒアリングができなかった場合は待ち合わせ場所に多少早めに集合してヒアリングしてから案内してもよいだろう。
案内と説明では買主の興味や利益に感じる点について積極的に案内をし、説明をした方が良い。日当たりなら実際に日照を見てもらうのはもちろんのこと、方位や、前面の建物との離隔距離、用途地域における建物の高さ制限などの情報を伝えることだ。各設備の故障の有無もそうだろう。一緒にチェックするとなお良い。
また、すべての部屋が見られないと買主は「そこに何か問題があるのでは」と不安になる。リフォーム前提の買主以外はできるだけ見せてもらうように手配をしておく。
「別に〇〇さんでなくても構わなかった」と言われては営業担当者としてNGなので買主とコミュニケーションを取って進めていきたい。
アフターフォローは案内後の「購入する」「しない」「前向きに検討する」の各判断を買主からもらうことだ。営業担当者としても結論をもらわないと先に進めないので必ずもらっておこう。
また、前者2つは答えが明確なので判断は間違いにくいが、「前向き検討」は、一定の情報や条件を与えれば購入に進むのか、それとも購入を断りづらいのでうやむやでそう言っているのか、どちらかを極めないと変に引っ張って時間の無駄になる。遠慮せず明確な判断を促そう。
【プロフィール】
はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。
2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。