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ニュースが分かる! Q&A コロナ禍が戸建て商品に与えた影響 家族との時間を見つめ直す

 記者A 在宅勤務って切ないよ。

 記者B 切ない? 在宅勤務への感想として、あまり聞かない表現だな。

 A 私は独身だから、テレビ会議システムや電話を使った取材か、じかに対面する取材、要するに仕事を除くと、誰とも話さない時間が長いんだ。世界から取り残された気持ちになるときがあるよ。たまに出社して同僚と雑談する時間がとても貴重に思える。

 B 私は結婚して子供もいるが、そのほうが在宅勤務は大変だよ。自分用の部屋がないし、子供は家の中を走り回るし。そう言えば、大手ハウスメーカーのテレワーク対応プランをまとめていたな(8月18日号1面)。

 A テレワークという言葉も使ったが、それは情報通信技術を活用して本来勤務する場所やオフィスとは異なる場所で働くもの。サテライトオフィスとかも含まれるので、あの記事は基本的には注文住宅における在宅勤務対応プランがテーマだよ。新商品には新型コロナウイルス感染症対策、家族で過ごす時間の長時間化への対応とかも含まれているよ。

 B 詳しく聞かせてくれ!

玄関で手洗いを

 A 新型コロナの感染拡大防止のために、玄関部分に手洗い設備を設けるのは1つの傾向だな。家の中に入る際の家族への配慮を感じるよ。注文住宅は自由設計だから、基本的に顧客の要望に対応できる。新商品やモデルプランをつくるのは、営業担当者が提案しやすいという面がある。当然、商品化は顧客ニーズを踏まえて行われる。

 B イメージしやすいのは大事だね。玄関部分に衛生的な設備を設けるのは大手ハウスメーカーだけではないよな。

 A 当然。アキュラホームは「新生活様式」を踏まえたモデルハウスを開設して、その中で玄関(土間スペース)を「ウイルス除菌エリア」として提案を強化しているよ。

 B 自宅で感染拡大を防ぐアイデアは他にもいっぱいありそうだけど。

 A 大和ハウス工業は共働き世帯のためのプラン「家事シェアハウス」を踏まえ、「自分専用ロッカーで衣服の消毒」「手洗いをして部屋着でリビングへ」といったアイデアを提案している。

 B 「家事シェアハウス」は16年に発表されたものだったね。コンセプトがしっかりしているから、そうした提案ができるわけだ。空間の使い方って面白いよね。

運動や家飲みも

 A 家族で一緒に過ごす時間が長時間化すれば、開放感は重要だ。住宅関係ではこれまで大開口・大空間の追求が大きなトレンドだった。コロナ禍でも開放感は重視される。ミサワホームの新商品「プライムスマート」では、約3メートルの高天井とハイサッシをリビングで標準仕様にしているし、積水ハウスは大空間を2階にも展開できる新コンセプトモデル「ファミリースイートおうちプレミアム」を投入している。

 B 「ファミリースイート」って、家族のつながりや幸せを考えるところから始まった大空間リビングだったよな。

 A 大空間内のレイアウトにより、「在宅ワーク」に加え、「おうちでフィットネス」「うちdeバル」といった運動や家飲みへの対応も提案している。

 B 外出自粛の推奨に対応できるね。住居の外でしていたことを内でやるわけね。

 A コロナ禍の中で、家族で過ごす時間、そのあり方を見つめ直した結果だよ。戸建て住宅は家族が過ごす場所という観点は変わらない。変わったのは家族を取り巻く社会環境だ。本質を忘れてはいけない。

 B 確かに、ニューノーマル(新常態)という言葉が頻繁に使われて、何かが大きく変わるような雰囲気が醸成されているが、変わらない本質ってあるよね。ただ、私の家庭では確実にニューノーマルが発生している。切ないのは私のほうかもしれない。

 A どうした?

 B 家で原稿を書いていると、嫁がイライラして『原稿を書くだけなら、公園のベンチでやれば』と言ってくる。以前はそういうことはなかったのに。

 A もう一度、家族で過ごす時間を見つめ直す必要があるようだね……。