国税庁は4月23日、新型コロナウイルス感染症の影響により地価が大幅に下落した大阪府の13地点について、20年路線価(同年7月1日公表)の補正を行うことを明らかにした。経済状況の悪化による路線価の補正は20年7~9月分に続いて2度目。同年10~12月に相続等により、当該地域で土地等を取得した場合、路線価に「地価変動補正率」を乗じた価額に基づき評価額を算出することとなる。
今回の「補正率」の対象は、いずれも大阪市中央区の商業地域。同年7~9月分で補正対象となった「心斎橋筋2丁目」「宗右衛門町」「道頓堀1丁目」の3地点を含む計13地点となり、対象範囲が拡大した格好だ。
対象期間は20年10~12月分で、補正率は0.90~0.98。例えば「心斎橋筋2丁目」は1m2当たり2152万円だったため、補正率(0.91)を適用すると1958.3万円となる。また今回最も地価変動率が大きかった「道頓堀1丁目」は、1m2当たり1865万円だったため、補正率(0.90)適用後は1678.5万円となる。
観光客不在の長期化が影響 東京、名古屋で二桁下落も
国税庁では、国土交通省が発表した20年第4四半期「地価LOOKレポート」および21年地価公示を参考にすると共に、外部専門家へ委託して地価動向調査を実施。その結果、20年1月以降10~12月までの間に、大阪市中央区の一部地域で20%を超える大幅な地価下落を確認したため、今回路線価補正を行うこととした。
地価下落の主な要因としてはコロナ感染症の影響によるインバウンド観光客の減少、飲食店街の営業自粛等が挙げられる。同庁によると、20年1月以降、12月末で20%を超える下落率となったのは大阪市内の13地点だったが、東京エリアでは新宿歌舞伎町がマイナス15%、銀座が同13%、浅草が同12%となったほか、名古屋エリアでは名古屋市中区錦3丁目が同16%と二桁を超える大幅下落となった。
20年12月末時点ではワクチン接種への期待感の一方、感染者数の増加や新たな経済対策など不安要素もあったことから〝様子見〟となった地点も見られるという。同庁が委託した外部専門家によれば、その中でも大阪で下落が続いたのは、「これまでインバウンド観光客で地価が大きく上昇していた反動の大きさであり、12月末時点でも外国人観光客の不在長期化に改善が見られなかったため」とし、長引く停滞感が地価の下落傾向の一要因であると分析している。
申告・納付期限の延長も
なお、今回の13地域で、20年10~12月に贈与により土地等を取得した場合、「個別の期限延長」によって、同路線価補正公表の日(21年4月23日)から2カ月間、贈与税の申告・納付期限を延長できることとなっている。
路線価等は、毎年1月1日時点の地価評価である地価公示などを基に、時価の80%を目安に相続税等の基準額を設定している。そのため、年内に大幅な地価変動が発生すると、路線価が時価を上回るケースが発生。災害等により一定範囲で著しい地価下落が見られた場合には、租税特措法に基づく「調整率」を定めて路線価の減額を図っている。