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飛躍への岐路 踏み出す一歩 まちづくりDXが加速 スマートシティ社会実装へ

 新型コロナ危機を契機とした都市やまちづくりのあり方をいかに捉えていくべきか。国土交通省都市局は21年12月14日に検討会を開き、都市政策の近況の報告と意見交換を行った。有識者からは、地方のマンパワー不足やエリアマネジメントの担い手強化を指摘する意見と共に、多様化、複雑化する都市需要に柔軟かつ機動的に対応するため、「都市計画制度の中に実験的要素を取り入れられないか」という指摘もなされた。まちづくり分野でのDX化と「スマートシティ」の社会実装が鍵を握る。

 デジタル化の急速な進展やニューノーマルへの対応により、職住近接ニーズの高まりやオフィス需要の変化、東京一極集中是正の可能性なども注目される。同検討会で宇野善昌都市局長は「将来の不確実性と機動的な対応を踏まえ、今後はマネジメントの高度化が求められる」と述べ、これまでの整備中心の都市計画からの転換を示唆した。

 新たな都市政策の一助となるのがICT等の技術を活用したスマートシティ構想だ。例えば、カメラによる人流分析・見守りやリアルタイムデータによる防災情報の発信、太陽光発電のポテンシャル推定など、新技術や官民データを活用し、都市課題の解決や新たな価値創出につなげる。住民満足度の向上やグリーン化など、多様で持続可能な「スマートシティ」の社会実装の加速が今後ますます重要となる。

 国は、政府一丸となってスマートシティの推進体制を構築すると共に、産官学が参画する官民連携プラットフォームを19年8月に設立(21年9月末時点で827団体)し、資金やノウハウのほか、関係者間のマッチング支援などを行っている。中でも国交省都市局は、(1)けん引役となるモデル事例の構築と全国への普及促進、(2)スマートシティの基盤となる3D都市モデルの構築支援、(3)デジタル技術の都市空間への実装支援――などに取り組む。

 直近ではこれらの実証実験などで得られた知見や課題をまとめるため、「スマートシティモデル事業等推進有識者委員会」を設置し、21年12月から検討を開始した。例えば、兵庫県加古川市では、河川分野のスマート化を図るため、国・県の河川情報システムと連携すると共に、行政情報ダッシュボード上でリアルタイム情報が一元化・可視化できるかどうかを検証。他行政機関など多様なステークホルダーとの調整・合意形成に時間を要する点に問題意識を持ちながら、コミットを促す体制構築と意思決定フローの明確化などに努めた。実装化・持続的なサービス拡大に向けては、共通データプラットフォームを広域展開し、サービスの拡充を図ると共に、周辺の各自治体から負担金を徴収することで自治体当たりのコストを削減する費用負担スキームの仮説を検討したという。

ユースケースの創出

 同局が20年度から推進するプロジェクト「プラトー」は、現実の都市空間を「3D都市モデル」と呼ばれるデータによって再現し、まちづくりや防災政策、新サービスの創出など様々なユースケースの創出につなげるというもの。整備したデータをオープンデータ化することで、市場ベースのオープン・イノベーションを促進する狙いがある。

 データ規格として国際標準のCityGMLで統合した上、幅広い企業や個人にアプローチしてプロジェクトの認知や利用促進に注力。これまで全国56都市を対象に、約1万キロという規模で3D都市モデルを整備し、40以上の実証実験などを展開する。これらの取り組みが評価され、21年度グッドデザイン賞の金賞も獲得している。

 「プラトー」の活用では、人や車の移動状況データを可視化してまちづくりのプランニングに生かす取り組み(静岡県沼津市)、垂直避難可能な建物を都市スケールでピックアップに成功し、防災計画を検討する例(福島県郡山市)もある。自治体や民間事業者などから今後も様々な使われ方が注目されるはずだ。

〝伝え、集い、募る〟場に

 デジタルの力で東京のポテンシャルを引き出す「スマート東京」を掲げる東京都もまた、スマートシティ構想に積極的だ。21年度はモデルエリアとする西新宿、大丸有、南大沢、ベイエリアの4地区で都市の3Dデジタルマップ化を実施。更に、ウェブサイトを公開し、都民や事業関係者の理解促進に努めている。

 昨年12月20日にウェビナー開催された「東京都スマートシティ連絡会」では、都内自治体の事例や都のデジタルツインの取り組みを共有した。デジタルツインプラットフォーム開発事業を手掛けるシンメトリー・ディメンションズ・インクの沼倉正吾代表は、オープンデータや各種APIなどを組み合わせることスマートシティを構築する同社のクラウドサービスについて紹介。「デジタルツイン渋谷プロジェクト」第一弾として取り組むササハタハツ(京王線笹塚駅・幡ヶ谷駅・初台駅)エリアの緑道整備の可視化について、「デジタルツインがまちづくりのビジョンを伝え、アイデアプランを集め、参加者を募る場所の役割を担う」と説明し、新たなまちづくりの展望を示唆。「デジタルツインは段階的に進む。アーカイブ、リアルタイム確認、そして将来的には事前予測、事前提案につながっていく」と結んだ。

 まちづくり分野でのDXの展望は、その技術的な進展や経済合理性にも左右されるが、多様なキープレーヤーの登場や、連続的なイノベーション創出の可能性を生む。もちろん、能動的に活用するのは「人」だ。住宅・不動産市場を取り巻く環境や参入事業者が多様化する今こそ、多くの英知を結ぶツールとなる役割が期待される。