不動産・建設業界向けを中心に、空間データ活用のソリューションを提供するMatterport(米国カリフォルニア州)は、日本法人マーターポート(東京都港区)を正式に設立し、日本市場に本格参入した。企業が簡便に「デジタルツイン」を作成して〝内製化〟できるよう、製品提供の拡充や、各社の支援を強化する。
同社製品は、現実のあらゆる建物の空間を、誰でも簡単に高精度・高品質で、仮想空間内に再現する〝デジタルツイン〟を作成できるプラットフォーム。同社提供製品の専用カメラ・機器やアプリを使うほか、新サービスとなる一般的なスマートフォンを用いて撮影。自動スキャンしてAI(人工知能)で解析し、デジタルツインを作成できる。
不動産業界などで使われている従来の一般的なVR(仮想現実)ツールは、360度パノラマ写真を画面上で遷移させて表示するのみ。一方、同社製品では、仮想空間内の画像を一層滑らかに表現できる。実際に現地を歩くかのようなウォークスルー機能や、建物全体をさまざまな角度から俯瞰(ふかん)できる点などに特徴を持つ。空間内では動画や画像などの情報の付加や採寸なども精細にできる。
4月14日に開いた報道機関向け発表会で、同社本社の会長兼CEOのRJ Pittman氏は、「可能性にあふれる日本市場に本格的に参入した。楽しめる新たな空間体験を提供する」、同社アジア本部マネージング・ディレクターのBen Corser氏は、「本格的な参入は当社の重要な一歩となる。デジタルツインの作成を各社が内製化し、新たなビジネスチャンスを創出してほしい」と日本法人設立の狙いを説明した。
空間の価値体験
同社日本法人執行役員社長に就任した簫敬和(しょう・けいわ)氏は、国内事業戦略について、「注文住宅の内見で活用されるなど、日本でも5年前から不動産業界で活用されてきた。デジタルツイン画像を容易に作成し、URLを発行して各社のウェブサイトに貼り付けて提示すれば、現実に歩いているかのような空間の〝価値体験〟をエンドユーザーに提供できる。活用する企業各社の支援を充実させていく」と述べ、次いで、企業の導入事例を紹介した。
不動産・建築で活用
三菱地所は、マンション販売モデルルームの3Dデータ化の内製化で活用している。外注に比べたコスト削減や、撮影当日に作成できるため、スピード感を持って対応して顧客のマンション購入決定までの期間を短縮化している。
また、竹中工務店では、既存建築物の修繕や改修時に活用している。新築時の設計図面がない場合に、これまでは現地撮影調査の手間があったが、デジタルツイン製品の活用によって、改修工事立案までの工数を削減している。