前回に続き管理に係る重要事項報告書について。今回はその内容についてとなる。
見方は買主にとって「希望する利用ができるか」「予期せぬことがないか」「私たちの勘違いがないか」の3つの視点で各項目を確認していく。問題となる記述がなければOK、一方で問題の記述があるようなら管理規約や使用細則で確認し、それでも解決ができなければ管理会社や管理事務所に連絡をして確認する。主にリフォームの手続きや、駐車場の空き状況などはこの手順をたどることが多い。
そして、できるなら「今、管理面で何が起きているのか」を総会議事録にある検討議題と合わせて読み解けば買主に対して期待されている説明は十分にできる。修繕積立金の増額が議題に上がっていれば、会計上の数字と修繕計画表と読み合わせて今回の増額でしばらく維持できるのか、まだまだ上がるのか、アドバイスができるようになる。上級者向けかもしれないが、訓練はしておいた方が良いだろう。
管理に係る重要事項報告書は一般的にA4サイズで数枚から十数枚程度。築年数が浅いほど枚数は多い傾向となる。書類が届いたら管理規約を片手に見ていこう。
具体的には、(1)専有部分の用途及び利用制限、(2)管理費等の月額と滞納額、(3)駐車場等の利用、この3点は必須。あとは買主の購入目的に従い必要な項目を読み込もう。少し慣れたら、(4)マンションの会計、を見る。将来、マンション管理士の取得を目指すなら会計は練習として読みこなしておくのもいいだろう。
(1)専有部分の用途及び利用制限では、住宅以外で使えるのかどうか、を見る。民泊利用は禁止と明記している報告書も多いが、それ以外でも住宅兼事務所はどうなのか、グレーな利用方法はここで判断をする。管理規約にも該当条文があるので照らし合わせて見ていくと良いだろう。
(2)管理費等の月額と滞納額は毎月何にいくら掛かるのか確認する。もし滞納額があるなら、その清算をしない限り新たな所有者に滞納額が引き継がれることに注意する。
(3)駐車場等の利用では、空きがあるのか否か、寸法や重量の制限に引っ掛からないかを見る。機械式のみならず自走式駐車場でも寸法や重量制限はあるので、買主に車検証上の寸法重量を聞いて一緒に判断をしていく。空き状況は管理事務室での確認も多いが、抽選方式か先着順かも合わせて聞いておきたい。
(4)マンションの会計では、会計上で赤字になっていないか、借入金に頼っていないか、修繕積立金は積み上げられているかを見る。
どれか1つでも該当すれば修繕積立金の増額や一時金徴収の可能性がある。
他にはペット飼育やリフォーム手続きの条件も確認しておき、買主の希望する利用ができるのかを判断したい。
【プロフィール】
はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。
2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。