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彼方の空 住宅評論家 本多信博 ◇136 30年目の課題と意義 専務理事に速水英雄氏 定借協、8月に講習会

 一般社団法人全国定期借地借家協会(定借協会=大木祐悟理事長)は今年5月の発足後、初のイベントとして8月5日に東京・銀座で「今だから知る!学ぶ!定期借地権」と題した講習会を開く。定期借地権は92年8月1日に施行された借地借家法によって誕生。この8月で丸32年が経過する。定借が現代そして未来に向けてどのような機能(パワー)が発揮できるのかを学ぶ機会となる。

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 当初の住宅用定期借地権はその多くが借地期間を50年としているため、あと20年足らずで期間満了を迎える契約が続々と出現する。期間終了時には原則として住宅を所有する借地人が建物を解体し、土地を地主に返還する。

 講習会で講師を務める大木祐悟氏は「30年経過して見えてきた定期借地権の課題とこれから」と題する講演の中でおそらく、期間終了時に建物解体や土地の返還を巡って万一トラブルが発生した場合の対応などについても解説するものと思われる。

 定期借地権は32年が経過した今でも国民はもちろん、不動産関係者の間でもほとんど認知されていないか、もしくは正しく理解されていないのが実態だ。その定期借地権の特性や機能を改めて整理し、今日的意義について語るのがもう一人の講師、勝木雅治氏。勝木氏は不動産鑑定士でNPO法人首都圏定借機構の理事長を務めている。講演テーマは「新時代の定借パワー」。両講師は定借誕生から今日までその普及に向け尽力してきた人物として知られるが、今回定借協会専務理事に就任した自称〝定借伝道師〟の速水英雄氏も間違いなくその一人である。

定借一筋

 定期借地権に詳しい専門家は多いが速水氏のように定期借地権一筋に仕事をしている人物を筆者はほかに知らない。徳島県出身で1950年生まれ。定借協会専務理事のほか、NPO法人沖縄定借機構理事長、定借住宅を数多く供給している(株)未来住建の監査役も務めている。なぜ定借一筋なのか。速水氏に聞いた。

 ――定借への想いはどこから。 

 「それまで勤めていた銀行の土地担保主義とは正反対の事業に最初は興味を覚え、カメヤグローバル(株)の定借事業部長として仕事をしていたが、そのうち定借事業から撤退する企業が増えていった。誰もやらないなら私が引き継ぎ世の中に広めていこうと決心した」

 ――具体的には定借のどこに魅かれているのか。

 「定借による土地活用は当事者全員に喜んでもらえる事業だと思う。地主、住宅購入者、事業者、そしてそこに出現した素晴らしい住環境が地域からも喜ばれる。いわゆる〝四方良し〟の定借はSDGsの時代にこそふさわしい」

 ――新しく発足した定借協会専務理事としての抱負は。

 「全国の中小不動産業者や工務店などと連携して定借を推進し、それぞれの地域再生を実現していく。日本は空き家の増加、マンションの老朽化、公有地の活用など問題が山積している。あまり知られていないのが残念だが、定借はそれらの課題を解決する機能を十分に有している」

 ――定期借地権が更に発展していくためには。

 「ネット系も含めた金融機関による定借住宅ローンの整備が鍵になる」

 ――速水氏が人生で最も大事にしているものは。

 「家族、恩師、友、そして信頼できる仲間。自分については常に世の中の人たちに喜んでもらうために行動するという志」

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 定借協会はかつての全国定期借地借家権推進機構連合会が解散した後、各地の定借推進機構が自主的に集まって結成した任意団体の定借情報交換ネットワークが母体。今年5月に一般社団法人としての発足に漕ぎつけた。速水氏はこの一連の動きの中でも定借推進という一事のために全力を注ぎ、そして今、定借伝道の新たなステージに立とうとしている。