独自性(オンリーワン)を強調したために内向きになりがちだった従来の姿勢を改め、堂々と中身(質)ナンバーワンを誇る外向き志向のブランドとすることを決めたBESS。個性的であることはそのままに、多彩な共感者らとの連携を求めて〝第二の創業〟に漕ぎ出したBESS。
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率いるのは6月の株主総会で創業者の二木浩三氏から社長職を引き継いだ壽松木(すずき)康晴氏。新社長のお披露目を兼ねたマスコミ関係者との懇親会が7月25日、東京・代官山にある旗艦展示場「BESS MAGMA」(ベスマグマ)で開かれた。
ここは、「程々の家」「ワンダーデバイス」「G-LOG」「カントリーログ」「ログ小屋」(IMAGO)、それと事務所を兼ねた「ドームハウス」という6つのログハウスが緑に囲まれた庭園に点在する、まさに都会のオアシスのような空間である。
梅雨は明けたものの蒸し暑い夏の夕べになぜかコオロギの鳴き声が響く。立秋はまだ2週間も先だったが、MAGMAに棲む虫たちが急ぎ何かを告げようとしているかのようにも聞こえた。
新会長の二木氏は猛暑で体調を崩さぬよう、オンライン出演となった。
「質ではなく、私はあえてそれを中身と言い替える。新たな連携を求めて外に繰り出すのだから中身には絶対の自信がなければならない。そこでこれからはオンリーワンではなく、中身ナンバーワンを標ぼうする。では中身とはなにか。その反対は体裁とか外見だから本物志向ということか」
BESSブランドの本質を表す言葉(スローガン)は多いが、その中に『ドレスアップより、ドレスダウン』『器量良しより、気立て良し』というのがある。体裁を取り繕い、建前が優先される現代社会にあって、本物の中身で勝負しようとする気概をもつ企業こそ社会の共感を得ると信じたい。
同じB型だが
新社長の壽松木氏は秋田県出身で現在59歳。秋田が最も多いが全国でも数十人ほどの珍しい苗字だという。二木氏が折り紙付きで新社長に指名した。二木氏はその理由を「血液型は自分と同じB型だが、私と違って外向きだ」と説明する。
もちろん外向きの性格は新築戸建て事業に限定することなく、これから様々な領域にBESSファンを広げていく〝オアシス業〟のけん引者として欠かせない資質となる。しかし、それだけではなさそうだ。あまり理屈を述べず、感性マーケットという市場を切り開いてきた創業者精神を引き継ぐことだけに全力を傾けるタフガイにも見える。
それはこの日の挨拶の冒頭、「社長になって大変でしょうとよく言われるが、既にBESSという強固なブランドができているので、私はその領域を広げていくだけ。万一失敗しても言い訳はできない」と語った潔さに見て取れる。
オアシス業の一つに自然とコミュニティを愛する人たちと共に進める「梺開発」がある。その第1弾となった長野県小諸市の「小諸 梅の坂上」は全20区画の販売が完了。小諸市からも高く評価され第2弾が準備されているという。そのコミュニティを支える下限の倫理観とも言うべき〝梺六範〟について、壽松木氏はその一つ、『楽しいことは遠慮なく、正しいことは控えめに』を好きな言葉として挙げる。機能性や利便性を重視するあまり人間関係が形骸化する一方の社会に人々の心は渇き切っている。だから、BESSはこれから「乾いた時代の雨になり、乾いたこころの花になる」オアシス業をめざす。その新しいBESSは『雨花(うか)集団』と名付けられた。
次から次へと新たな言葉を編み出すBESS。筆者も梺六範の『正しいことは控えめに』という言葉が好きだが、なるほど強い想いを抱いて〝雨花集団〟となるBESSのリーダーだからこそ、胸にとめおくべき言葉にも思えてくる。