電車で小一時間掛けても行きたいと思う酒場の一つが、大宮駅東口の駅前広場に面する「いづみや本店」だ。昭和22(1947)年創業。店頭には「朝から飲めます。おひとり様大歓迎。酒250円~ツマミ170円~定食600円~、営業時間10時~22時15分」とある。幅6メートルもあろう「いづみや本店」の看板のわりに素っ気ない入口の暖簾をくぐると、高い天井の採光窓から光の差し込む大空間。60人程の酔客の声がこだまする酒場空間に出会う。「今日は飲むぞ」と気合が入る。素っ気ない「白く大きな箱」だが、長年の煙草や焼物などの煙が、いい感じに白いキャンバスに染みついている。土間コンクリート床の中央には長いテーブルが2列置かれ、グループ客・一人客構わず椅子の数だけ詰めて座る。1人ならばどこかに潜り込めるし、3~4人でも回転が速いので少し待てば座れる。オープンでザックバランな空気、忙しく動き回る割烹着姿の70代ほどの女性スタッフらの振舞いも実に自然体。しかし、注文には少し工夫が必要だ。スタッフの配膳や片付けの様子を観察し、大きな声でタイミングよく声を掛けないと永遠に注文できない。
酒も食事もともかく安い。どれも美味い。壁にずらりと貼られたメニューの短冊から紹介したい。酒類、ビール大瓶(サッポロ)550円、黒ビール390円、上撰270円、滝正宗250円、生酒460円、冷酒670円、焼酎250円、梅割り250円、泡盛270円、その他レモンハイ、ホッピー、サワー、酎ハイなど300~400円。食事は誰もが頼むのはいずみや名代もつ煮込み170円、これが美味い。肉豆腐200円、うにくらげ390円、さらしくじら550円、まぐろ刺し650円、まぐろぬた400円、いか刺し650円、シメ鯖350円、鰺フライ350円、牡蛎フライ370円、とんかつ500円、焼売330円、おでん450円、ししゃも370円、レバ焼き370円など無数にある。暇な土曜などに、昼時から大宮へ出掛けるのも楽しい。(似内志朗)