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酒場遺産 ▶59 浜松千歳町 番屋 腕のいい強面の店主

 浜松で友人の結婚式に参列した。その後の飲み会も終わり、駅から少し離れたホテルから駅方面にぶらり歩くと、偶然に良い酒場に出会った。千歳町の中央通り(と言っても目立たない路地)に入ると小さく「番屋」という看板が見え、探していた酒場と直感した。

 暖簾(のれん)をくぐると右手が長いカウンター、左手がテーブル席だが、カウンター上部にはいい感じの絵付きのメニューが無数に貼られ、厨房には一家言ありそうなオールバックの店主と可愛いバイトの女子(チーちゃん)が立つ。創業44年、店主は北海道出身で、東京に出たが、訳あって浜松で家庭を持ち、ここで生計を立てようと44年前に料亭だった建物を改装し居酒屋をはじめたという。鰤・鮪・サーモン・タコの刺盛り、自家製ピクルス、牛すじ煮込みを頼んだが、どれも美味かった。酒は静岡の銘酒「喜平」熱燗、濃厚で美味い。池袋「たちのみ喜平」(酒場遺産11話)で飲んだ酒だ。この店のある千歳町エリアは飲食店も多く、元々料亭やクラブなどで栄えた場所だが今はかつての栄華もなくなったという。

 絵付きのメニューから。牛筋煮込み550円、ホルモン煮込み640円、おでん盛合せ660円、こんにゃく味噌田楽385円、嵐明太子550円、いか塩辛330円、茄子焼440円、山芋ステーキ大770円・小440円、玉子焼き440円。生ものはたこ刺身・鰤刺身・サーモン刺身・まぐろ刺身は全て880円、刺身盛り合わせ1100円。飯ものはニンニク炒飯550円、焼そば650円、焼うどん660円、その他おにぎり、梅茶漬け、海苔茶漬けなどある。

 店主と小一時間あれこれ無駄話をした。結構な歳だが俳優のような容姿で、強気の中にも人柄の良さが感じられる。料理の腕には相当自信があると感じた(実際美味い)。はじめて歩いたエリアだったが良い店を見つけた。(似内志朗)