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大言小語 耕す力

 米大リーグは今年も大谷翔平選手の活躍の1年となった。新チーム移籍の初年。投手としての出番を封印し打力、走力を発揮。本塁打王と打点王の2冠を獲得し、チームのナ・リーグ西地区制覇の立役者となった。角界では、石川県出身の大の里関が9月場所で2度目の優勝。初土俵から9場所でのスピード出世で大関に昇進した。平成生まれの若者が実力をつけ、令和の新時代に花を開かせている。

 ▼この10月からNHKで始まった朝ドラ「おむすび」も、平成から令和にかけての若者の成長を描く。平成のギャル文化や阪神・淡路大震災などを時代背景を盛り込んだという。同時代に青春を過ごした記者には懐かしさや挫折の記憶がよぎるが、令和の十代にはどんな時代に映るのか。しなやかさ、たくましさを発揮する若者が多く生まれる時代となるよう、先人たちは経験を還元していかなければならない。

 ▼さて、人材確保が叫ばれる昨今、業界も政治も若い力を育む土壌を耕してきたか。旧態依然の仕組みや議論を引き延ばし、時間ばかりが経過する。その〝負〟の穴埋めに若い力を利用するのはもってのほかだ。活躍の花を咲かすのは当人の努力やスキル次第としても、変化の時代に見合った土壌を整えなければ、種まきをする若者は減る。当然、花も実もつけることはなく土壌荒廃のリスクが増すばかりだ。だが、そんな大地を耕すことが若者の宿命というものか。