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酒場遺産 ▶60 鷲津 角打ち大津屋本店 飛び切りの角打ち

 JR東海道線の浜松駅と豊橋駅の中間あたりに鷲津駅(湖西市)がある。駅前は区画整理をしたのか、更地に雑草が生え建物が点在する、小さな地方都市にはよくある風景だ。その鷲津駅南口からすぐ近くに大津屋本店はある。筆者が仕事で訪れた会社のオフィスがこの近くだったので、仕事が終わり、日の高いうちから仕事仲間と訪れた。そう期待していなかったのだが、飛び切りの角打ちだった。大津屋の歴史は100年近く前まで遡る。1929(昭和4)年、大津屋の創業者土屋金作が、ここ鷲津駅前にて酒類・味噌醤油業を始め、38年に酒類販売業免許制移行に伴い免許取得。その後、豊橋店、新所原店と店を増やしていったという。いくつもの焼酎のかめが置かれている角打ちコーナーの他、広い店内には日本酒の一升瓶がずらりと並ぶ。品の良い老女将は関谷酒造「これっきりごめん」を並々と注いでくれた。バランスの取れた美味い酒だった。一合の売価300円とは本物の角打ちだ。

 足元をウロウロする虎猫のコナンは人懐っこく、みなの人気者だ。壁には大津屋創業家一家のモノクロームの写真が掛かる。祖父母と両親に囲まれた女将は若く美しいが、時を経ても美貌と品性は変わらない。

 大津屋の扱う酒は、関谷醸造(1864年・元治元年)愛知県設楽町で創業)、花の舞酒造(創業130年、静岡県浜松市。静岡県産米100%使用)、土井酒造(創業150年、静岡県掛川の造り酒屋。開運で有名)など。代表的な酒は、蓬莱泉純米大吟醸「空」及び15年古酒、湖西限定酒「これっきりごめん」特別純米酒(湖西市「五百万石」を用い地元の酒屋・農家・蔵元・市役所の人と田植えから収穫・籾摺り・風乾、関谷醸造で醸造)、遠州鷲津本興寺特別本醸造、佐吉の里純米吟醸・特別純米・純米大吟醸、開運初蔵純米中汲み生原酒、酔虎50%純米吟醸、遠州の四季生貯蔵酒など。飛び切りの角打ちは鷲津にあり。(似内志朗)