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不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(65) ~畑中学 取引実践ポイント~ 不動産問題はスピード重視で 「引き渡し顧客からの連絡対応」

 顧客からの不動産引き渡し後の連絡は「速やかに対応する」ことが原則だ。つい「クレームだと面倒くさいな」と感じて顧客から連絡があると対応するのに躊躇(ちゅうちょ)することがあるかもしれないが、後に延ばすほど大きな問題に発展するので、速やかに対応しておこう。

 「他の優先する仕事がある」という場合でも、顧客からの話の内容を一通り聞き、「改めてご連絡をいたします」と対応しておく。そうすれば時間の猶予ができ、かつ顧客に「対応してくれる」と安心感を持ってもらえる。一般的に顧客の多くは「不動産会社は契約が終ってしまうと対応が冷たくなるのでは?」「大手以外の不動産会社は問題が生じても対応してくれないのでは?」と不安を感じている。その不安を感じさせないように、中小の不動産会社ほど引き渡し後のしっかりとした対応は不可欠だろう。

 引き渡し後に顧客から連絡がある場合は主に次の3つだ。

 (1)不動産の問題、(2)書類(国土交通省のアンケートなど)への対応、(3)税金関係の質問だ。後者の2つはそこまで急いで対応せずともクレームには発展しないが、(1)不動産の問題だけはスピード感が重要となる。

 一般的な対応方法は、(1)問題点の聞き取り→(2)解決方法の提案→(3)かかる費用と負担→(4)スケジュール感→(5)顧客にしてもらう次の行動→(6)質問への対応、これらだろう。

 顧客の話の内容次第によって順序は変わるが、おおむねこの対応で十分だ。筆者もそうしている。

 先日仲介が終わったマンションで買主から午後9時頃に「お湯が一定量出てくると、その後は冷たい水が出てくる」と給湯器の問題の連絡を受けた。話を聞き取った上でその日は対応方法がないので、ひとまず「明日朝一で対応します」と返した。これが(1)だ。こちらで何か言いたいことがあっても、顧客の話はすべて聞き取ってから返す方がスムーズかもしれない。翌朝すぐ東京ガスの技術診断サービスに連絡を取り、給湯器の故障確認を依頼。その上で昼前には顧客に東京ガスの給湯器確認を行う提案をして、診断や故障があった場合の対応費用は売主負担とすること、室内に立ち入る日程調整、診断は1時間程度で故障があった場合は再度スケジュールを提示、買主には給湯器確認の際に立ち会ってもらうのみと説明をした。(2)~(5)である。後はこの件で何か質問があれば……と(6)の対応した。

 念のために他の設備機器の状況も聞いておいた。買主との話が終わった後は、売主にも状況説明の連絡をした。これが一連の流れとなる。結果は故障などではなく単に温度設定の問題だったのだが、内容はともかく早い対応に買主は安心感を持ったようだった。「速やかな対応」これは必須といえるだろう。

【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。

 2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。