政策 総合

社説 16年連続で日本人減少 活路は海外と移民政策

 総務省が8月6日に発表した「住民基本台帳に基づく人口」によれば、今年1月1日時点の日本人は1憶2065万3887人だった。前年から約91万人減って09年をピークに16年連続でマイナスが続いている。少子化が及ぼす経済への影響は避けられない。死亡者数が出生者数を大幅に上回る状態が続き、出生者数は68万7689人で最も少ない。一方で外国人は増えて初めて350万人を超えた。集計を始めた13年以降で最も多くなり、外国人を含めた総人口数は1億2433万690人である。外国人人口は全都道県で増加しており、東京都が最も多い。

 住宅・不動産業界に目を転じれば、持続的に企業成長していくため動き出している。人口減少でしぼむ国内需要を見据えて住宅・不動産各社は海外事業を新たな収益の柱に据え始めている。大阪・梅田の開発が想定以上に時間を要しているとの声も聞かれるが、その背景として、想定したほどの需要が大阪になかったことが大きいとみられ、最後はその埋められない需要を巨大な広場を作ってしのいだとの専門家の指摘もある。

 日本第2の都市でさえそうなのであれば、住宅・不動産大手の事業戦略として、東京の次は「世界」に目を向けて投資の2割を海外に設定していることもうなずける。米国、アジア、オセアニア、欧州…。過去のバブル期に海外進出が相次いだが失敗に終わった。同じ轍(てつ)を踏まぬように各社は、現地事業者とのアライアンスで海外事業に打って出ている。

 足元の米国事業は、トランプ政権の高関税政策や金利の高止まりを反映してさえないものの、関税交渉が一巡したり、米政策金利が下げに転じれば潜在的な住宅取得の需要を刺激する可能性があり、長期的な問題となりうる公算は小さい。米国の人口は緩やかに増えているので中長期に慢性的な住宅ストック不足となる。半面、日本の人口問題は長期に横たわる。

 企業が外に目を向ける一方で、政府としては内需拡大に向けての政策を置き去りにしてはならない。人口の減少は死亡者数が出生者数を上回る「自然減」が最大の理由である。とはいえ、その出生率は一朝一夕に回復できるものではない。そうであるのならば、人口を維持し経済を拡大させるには移民政策は避けられないだろう。

 ただ、なんでもかんでも受け入れるわけにもいかない。出入国在留管理庁は外国人向けの「経営・管理ビザ」の要件を10月に省令改正して厳格化する方向だ。手軽に滞在するために実態のないペーパーカンパニーで不適切に滞在することを防ぐことが狙い。日本に本当に貢献できる外国人に滞在してもらい、単なる人手不足を補う政策ではなく、海外の高度人材を取り入れてその知識とノウハウを迎え入れる体制づくりにもつなげたい。〝消滅国家〟と名指しされ座して死すことを待つことはあってはならない。