国土交通省の諮問機関である交通政策審議会(金本良嗣会長)は7月15日、赤羽一嘉国土交通大臣に対し、「東京圏における今後の地下鉄ネットワークのあり方等」に関する答申を提出した。これを踏まえた赤羽大臣と小池百合子東京都知事による面談では、東京8号線延伸など2路線の事業主体として東京メトロが適切である点で合意。今後の東京メトロの株式売却に向けて、国と都が連携を強化する点も確認した。
同答申ではまず、地下鉄ネットワークについて、本来の輸送手段としての役割に加え、国際競争力の強化、環境問題への対応からも充実を図る重要性を指摘。更に、コロナ禍で〝人と人・モノ〟をつなぐ交通ネットワークは利便性の向上や新たな価値創造のためにも不可欠であると強調する。その上で、検討対象として(1)東京8号線(有楽町線)の延伸(豊洲~住吉)、(2)都心部・品川地下鉄構想(今週のことば)、(3)都心部・臨海地域地下鉄構想を選定。今後の方向性として、それぞれの都市の機能と求められる鉄道ネットワークが既に明確である東京8号線延伸および品川地下鉄構想については、「事業主体の選定や費用負担の調整を早急に進め、早期の事業化を図るべき」と提言した。また、臨海地域地下鉄構想については、臨海部の都市づくりと共に、常磐新線延伸(つくばエクスプレス)との接続も含め、関係者間で事業化に向けた検討を深めるよう提言している。
同答申ではまた、東京メトロへの具体的な協力として、東京8号線の延伸および品川地下鉄構想については東京メトロが事業主体となることが適切とした。一方で、多額の設備投資を伴う新線整備によって、東京メトロの経営に悪影響を及ぼさないことを前提とし、地下鉄高速鉄道整備事業補助や都市鉄道融資の活用など十分な公的支援が必要であるとの見解も示した。
更に、東京メトロの完全民営化の方針がこれまでの閣議決定や法律によって規定されていることから、東京メトロ株式の上場に向けた取り組みの必要性を明示。国が保有する東京メトロ株式の売却収入を復興財源として確保するためにも株式売却を早期に進めていくべきとした。
同答申では、株式売却に当たって、東京メトロの役割を踏まえて段階的に進めることが適切とし、東京8号線の延伸および品川地下鉄構想の整備期間中は、両路線の整備を確実に遂行するため、国と東京都が当面株式の2分の1を保有することが適切とした。その後は首都の中枢エリアを支える地下鉄の公共性や地下鉄ネットワーク整備の進展を踏まえて対応すると共に、公正な価格・方法で売却するため、国と東京都が共同で手続きを進め、同時・同率で売却すべきと提言している。
臨海地下鉄検討会立ち上げ 都の参加要望に国も同意
同答申を受け、7月15日に赤羽大臣と小池都知事によるウェブ面談が行われた。小池都知事は東京の地下鉄ネットワークの充実は、東京の持続的な発展と日本全体の成長につながるとした上で、「多彩な魅力とポテンシャルを併せ持つ臨海地域では持続可能な都市モデルを実現していく」と述べた。今後は事業計画策定に向けた検討会を立ち上げる考えを示し、同検討会への参加を国にも要望した。また、東京8号線延伸および品川地下鉄については、東京メトロを事業主体とした早期事業化へ向けて、国と都が支援しながら取り組むと語った。
赤羽大臣は、同答申について、「(1)首都・東京の地下鉄ネットワークの拡充、(2)東京メトロの完全民営化の促進、(3)東日本大震災からの復興に必要な財源の確保という長年の課題を同時に解決する道筋となる」と評価した上で、「臨海地域地下鉄構想については都が主催する検討会に国交省としても参画し協力する。メトロ株式についても、当面は国と都が保有し、連携を図りながら売却準備手続きを進めていきたい」と述べた。