国土交通省は、建築物分野での省エネ対策の加速や木材利用の促進を図る「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律案」を、今国会に提出する方向で調整中だ。国会開会時の提出予定法案では「検討中」とされたが、ウクライナ情勢等を受けた経済構造転換の必要性などを踏まえ、判断した。速やかな法案提出へ向けて手続きを進めていくという。
住宅・建築物の省エネ性能向上は、政府が進める脱炭素戦略の柱の一つ。建築物省エネ法改正案は、これまで中大規模の非住宅が対象だった断熱性能などの省エネ基準を、25年度までにすべての新築住宅・非住宅に義務付けるもの。有識者検討会での議論を経て今国会提出を目指していたが、開会時に同省が示した提出予定法案では「検討中」とされ、見送りの可能性が示唆されていた。背景には、今夏に参院選を控えて会期延長が見込めない中で、十分な審議時間が取れない見通しだったことなどがある。
4月15日の閣議後会見で斉藤鉄夫国交大臣は、「2月以降のウクライナ情勢等を受けて、省エネ化促進など経済構造の転換が強く求められていることなどを踏まえた判断だ」と、法案提出に向けた国交省の考え方を説明。既に法案提出に向けた必要な準備を進めているとした上で、「今後の国会日程も踏まえ、法案の速やかな提出に向けて手続きを進めていく」と述べた。
住団連、自民幹部へ表敬訪問
4月15日には、住宅生産団体連合会(芳井敬一会長・大和ハウス工業代表取締役社長)の副会長5人を含む執行役員一行が、世耕弘成自由民主党参議院幹事長を表敬訪問した。住団連の竹中宣雄副会長(ミサワホーム取締役会長)は、先月の要望活動を踏まえて自民党内で法案審議に向けた動きが始まった点に感謝の意を伝え、「住宅事業者の大多数を占める中小工務店などが法改正に適正に対応するためには少しでも早く改正内容を確定し、公表されることが不可欠」と述べた。更に、「本法案には建築物における木材利用の可能性を広げ、我々が連携を強化している国内林業の振興にも寄与する」と述べ、法案の早期審議に向けた継続的な支援を要望した。
これを受けて、世耕参議院幹事長は、「従来の建築物省エネ法では一般住宅が対象から抜けており、2050年カーボンニュートラル実現へ向けた取り組みが甘くなるという危機感があった。省エネ住宅の普及促進は業界にとってビジネスチャンスであり、日本の経済成長にもつながる。資材の高騰などで厳しい状況にある住宅業界にとって、少しでも追い風となるように」と説明した。
更に、今後の党内プロセスや野党への説明、国交委員会における審議など予断は許さない状況が続くとした上で、「順調にいけば今国会で成立できるのではないか。最後まで気を抜かずに成立に向けて頑張っていきたい」と力強く語った。