前回に引き続き販売活動前の売却準備。売主にしていただくことだ。集客、案内、クロージングの3段階に分けて(1)案内可能日の確認、(2)整理整頓と清掃、(3)資料提供の各依頼をしていくことになる。ここでのポイントは「売却に必要なことは、言いづらいことでもハッキリ伝えること」だろう。結果として「高く」「早く」「効率よく」売却できる可能性が高まるからだ。その理由を見ていこう。
(1)案内可能日の確認は売主居住で販売をする場合には必須となる。平日でも案内を入れて良いのか、土日の夜も対応できるかなどである。検討者から内見希望日を聞いてから確認するのでも構わないが、それで売主に難しいと言われると、また買主(検討者)と調整するなど二度三度手間がかかってしまう。それなら事前に「最低限、毎週土曜日の10時から18時までは案内が可能」など売主と無理がない程度で決めておくと調整が楽になるだろう。また、電話、メール、LINEなど主要な連絡方法を決めておくのもいいだろう。特に小さな子供のいる売主とは不可欠かもしれない。筆者も若い頃、週末の案内確認のため売主に電話をしたら「呼び出し音で子供が起きちゃったじゃないですか。せっかく寝付いたばかりなのに……」と苦言を呈されたことがある。それ以降は「事前に確認する派」へ宗旨替えをした。どちらにしろ聞いておくに越したことはないと思う。
売却物件の(2)整理整頓と清掃は検討者に「綺麗に」「広く」「明るく」見せることができ、イコール「高く」「早く」「効率よく」売却できるようになるので、できるだけ売主に依頼をしておこう。ただ、これは売主に「私の部屋が汚いということか」と不快がられないかと気後れしてとても言いづらい。また売主の性格によっては過剰な反応を引き起こすこともあって、慎重に対応すべき点だ。その場合は言い方を変えて「部屋に物がないほど広く見えて高く売れます」とか、「少しでも汚れがない方が買主は購入を決めやすいです」など、直接的に整理整頓や清掃をして欲しいと言わず、間接的にそうすれば高く早く売れるでしょうとアドバイスをする程度で十分だ。理想はマンションのモデルルームとでも言っておけば売主もイメージがつくかもしれない。
(3)資料提供の依頼は、案内時に買主へ説明したり、購入検討の際に参考となる資料だ。主に一戸建てなら柱の位置が分かる間取図(建築確認通知書添付の間取図がベスト)や、測量図や境界確認書など、マンションなら総会議事録あたりだろうか。依頼をしても「見当たらないです」と言われ、すぐ出て来ないので探しておいてもらおう。買主からリフォームや管理状況の質問の際には必須となる資料だ。これらの準備が整ったらいよいよ販売活動に入っていく。
【プロフィール】
はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。
2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。