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社説 石破新総理就任、手腕に注目 所得向上で「内需の柱」支えよ

 10月1日、自由民主党の石破茂氏が我が国の新たな内閣総理大臣に就任した。異例の激戦となった総裁選を制し、同党内のみならず多くの国民の期待を背負っての船出である。山積する国内外の諸課題にいかに対応していくのか、その手腕には注目が集まっている。

 なかんずく、経済政策は極めて重要なポイントの一つであり、住宅・不動産業界としても、最も関心の高いところだろう。具体的な政策は今後の実践を注視していく必要があるものの、まず金融政策については、総裁選時の「所信」や、総理就任後の会見での発言等において、日銀の現方針と共同歩調をとり「経済を冷やさない速度での正常化」を目指すとしており、当面は急激に資金調達環境が大きく変化する懸念は薄そうだ。

 そして、それ以上に重要なのは、国民の所得環境改善に向けた取り組みだ。住宅価格の高騰が続く中、持ち家の新築着工戸数は33カ月連続で前年同月を下回り、分譲住宅も右肩下がりが続く。人口減少だけでなく、住宅取得のボリューム世代における所得の低迷が市場の縮小を招いていることは論を待たない。行政も各種施策で住宅取得を支援しているものの、そもそもの所得水準と供給価格のかい離が大きすぎては、その効果も限定的にならざるを得ない。

 石破氏は総裁選に臨む際の所見で、「非正規雇用をなくすための制度改革」「最低賃金の引き上げ加速」など、雇用と所得の改善に向けた方針を掲げた。これらの実現により国民の経済状況が好転すれば、「内需の柱」たる住宅の需要を喚起し、国内経済の好循環にも波及することだろう。

 加えて、石破氏は初代地方創生担当大臣であり、東京一極集中の是正や地方圏の活性化に対しても知見と意欲を持つとされる。「日本経済の起爆剤としての大規模な地方創生策を講じる」(「所信」)という宣言の具現化も待たれる。

 更に、同党賃貸住宅対策議員連盟(ちんたい議連)の会長として提唱してきた、賃貸住宅に関する施策についても、総理の立場からの対応を期待したい。特に、「賃貸住宅修繕共済における大規模修繕の範囲拡大」など、賃貸住宅の品質・管理に貢献する施策については、多くの国民の居住環境改善と共に、賃貸オーナーの経営環境の向上にもつながるため、社会経済にも好影響をもたらすはずだ。

 重要なのは、こうした各種政策の「有言実行」である。総裁選や、近く想定される総選挙の対策として掲げただけの看板倒れにしてはならない。住宅を始めとする内需経済の発展のため、鍵となる国民の実質所得の向上に尽力する責任がある。そしてこれは、民間企業の協力も不可欠だ。今後、丁寧な対話で経済界の理解を得られるかどうか。また企業側も、長期的な視野で「人への投資」を行う体制へ移行できるか。互いに、我が国の将来に対する姿勢と責任が問われる。