不動産価格の高騰を受けて投資家の意欲が減退するどころか旺盛である。日本不動産研究所の「不動産投資家調査」(4月現在)を見ると、「新規投資を積極的に行う」という回答が94%に達しているが、期待利回りは低下傾向。東京・城南地区のワンルームの期待利回りは4%を下回る水準で投資妙味は薄れている。もっとも、この調査はプロが回答しているため、サラリーマン大家などは投資を積極化するかどうかはまた次元が異なってくる。
▼実需層としてはマンションなどの住宅価格が高騰する中で、じわりと切り上がる住宅ローン金利が気になるところだ。そんな中で、金融業界ではリテール顧客の獲得に向けての動きが加速している。住宅ローン事情に詳しいMFSの塩澤崇氏は、「携帯キャリアと銀行がタッグを組んだリテール金融競争が本格化し、住宅ローンの集客や商品開発に影響がありそうだ」と分析する。一般消費者に魅力的な住宅ローン商品を出すことで住宅購入意欲を下支えにつながることに期待する住宅販売現場の担当者は少なくない。
▼ただ魅力的なローン商品があったとしても物価高に賃金が追いつけていない。住宅ローン金利が上がれば生活の質の低下は進む。厚生労働省が6月4日に発表した統計で出生数が初めて70万人を割り込んだ。生活の質が保たれない中で子供を持とうと考える夫婦が更に減っていき、あらゆる業態の将来成長に影を落とす。