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大言小語 〝虫の知らせ〟で実感

 「バタフライエフェクト」という言葉を初めて耳にしたのがいつだったのかは思い出せないが、NHKのドキュメンタリーのタイトルにも使われるほど、気が付けば浸透していた。「一羽の蝶の羽ばたきが様々な連鎖を引き起こして遥か彼方で大きな嵐となる」という比喩を基に、ごくわずかな変化が将来、大きな変化を引き起こし得ることを指す概念のはずだが、今夏は特に「セミの声が聞こえない」といったニュースを散見した。

 ▼梅雨明けと同時に鳴き始めるが、今年は梅雨が早く開けたことから、実際にセミが鳴き始めるタイミングまでの間に差が生じたため、「夏が来たのにセミが鳴かない」と思い込んだだけ、とも言われており、確かにセミは鳴いてはいる。だが、鳴き声だけで不快指数が上がるような大音声は、どうやら今夏は聞かずじまいだ。「セミの声が聞こえなければ少しは涼しく感じるはず」などという過去の自分の体感は、完全に気のせいだった、と言わざるを得ない。

 ▼今夏は、蚊に刺されることもあまりなかった。蚊は人間が放出するCO2を感知するので、人込みでは特に刺されやすいはずだが、夏祭りの後も大汗をかいた割には、ほとんど気にならなかった。蚊に刺されにくくなったことは喜ばしいが、少なくとも10数年前には「ミツバチが来なくなった」といった声はあった。気候変動はもはや「初期の小さな変化」の段階にはなさそうだ。