非対面・非接触のニーズが増えている。外出の場面では、感染を少しでも防ごうと、電車ではなく、「自転車」の利用が増えている。排気ガスを出さず、環境にやさしい。気分転換や運動不足解消で健康にも良いと改めて注目されている。一方、室内の場面では〝巣ごもり〟状況をより快適に過ごすために、インターネット通信販売が急増した。「置き配」の普及が広がり、再配達を減らして配達車両の二酸化炭素の排出を抑える。不在時も荷物を受け取れて入居者の満足度を高めている。
今般の状況で自転車の価値が見直されている。世界中で過熱気味で、自転車本体に加えて消耗パーツも品薄状況にある。比例するように、「使いたい時間に使いたい場所にないなど、駅周辺や近隣の駐輪場が足りない、放置自転車や不正駐輪の問題の声も多く聞く」(アイキューソフィアまちづくり推進室ヴァイスプレジデントの原有里奈氏)。
アイキューソフィア(東京都新宿区)は駐輪場シェアサービス『みんちゅうSHARE―LIN』(以下、みんちゅう)を運営し、利用者と駐輪場所有者をマッチングしている。ちょっとした空きスペースを使って機械式のようなコストを掛けずに「予約制駐輪場」を開設でき、誰でも貸し借りができる(写真(上))。
専用のアプリでつなぐ。貸す側は場所や日時などを事前登録し、遊休化していた空間を新たな収益源にできる。借りる側はそれを検索して予約し、料金を支払い、気軽に利用できる。
その有用性に、注目度が高まっている。駅前の金融機関や、東京都内と神奈川県内の6つの行政機関に加え、電鉄企業との連携事業も始めた。
京浜急行電鉄(横浜市西区)は、高架下に21箇所101台分の駐輪場を開設し、『みんちゅう』を5月に導入した。不正駐輪に頭を悩ましていたが、「美観を保つ高い効果などもある。試験導入の段階から評判がよく、本格的に稼働を始めている」(原氏)。
小田急電鉄(東京都新宿区)とも6月に業務提携した。小田急電鉄が運営する駐輪場「オダクル」に、『みんちゅう』を導入し、連携駐車場として8箇所73台分を開設した。小田急電鉄運営の地域密着型プラットフォームの「ONE」(オーネ)とも連携し、普及に力を入れる。「認知度の向上で駐輪場の利用に一層関心をもってもらいたい」(原氏)と、土地や空間の所有者からの新たな駐輪場スペースの提供にも期待を寄せている。
まちの活性化に
行政、金融や電鉄企業との連携には、「ITを生かし、まちを楽しんでもらい、まちの活性化にもつなげていきたい」(アイキューソフィア代表取締役社長の中野里美氏)との強い想いがある。街中で気軽に便利に駐輪場を使えれば、「地元の商店街に人々が集い、人の往来が生まれる。まちの姿を見つめ直す機会になれば、地元の主体的なまちづくりの機運も高まる」(中野氏)。そう願っている。
新たな取り組みも始めた。地域の店舗と提携して来店時に「ポイント」を付与するサービスだ。大事に貯めたそのポイントは『みんちゅう』の利用時に使える。土地所有者からの相談を受けて、シェアメニューを追加した。「菜園などの〝ガーデン〟や、会議室などの〝スペース〟もシェアできる。〝ウォール〟は店舗内の壁を地域の小さなギャラリーにする。連携先の行政や電鉄企業などを増やし、人々を、まちを、つないでいきたい」(中野氏)と展望する。
〝巣ごもり〟需要でネット通販が急伸し、比例してその荷物の「再配達」が社会問題化している。荷物を注文したマンション入居者には不便。配達車両が排出する二酸化炭素が環境負荷を高める。そこで注目されているのが、不在時でも荷物を玄関先などに届けるサービス「置き配」だ。
普及の〝壁〟がマンションのオートロック。その課題の解消に向けて、ライナフ(東京都文京区)は、同社で開発・提供するスマートエントランス『NinjaEntrance』(ニンジャエントランス)などのスマートロック技術を生かした取り組みを始めた。配達時だけ一時的に解錠できるデジタルキーを発行して、玄関先まで届ける仕組み。ライナフでは、不動産会社や、AmazonJapan、ヤマトホールディングスなどと連携して、「入居者の受けるメリットは大きい。新たなサービスも創出していきたい」(ライナフ代表取締役の滝沢潔氏)と、「置き配」の普及に力を入れている。
ビットキー(東京都中央区)では、佐川急便(東京都江東区)と共に、スマートロック技術と「顔認証技術」を活用して、「玄関内」まで荷物を届ける「置き配」の実証実験を重ねている。また、日本郵便(東京都千代田区)と、同様な実証実験を東京都内で7月27日に着手した。
今般、観光や宿泊の需要は減少したが、新たな需要も掘り起こされている。それにどのように応えるのか。今後の経営戦略で取り組むべき視点の一つとなっているようだ。