経営戦略と人事戦略を整合させる〝人的資本経営〟は優秀な人材を呼び込み、つなぎとめるために欠かせない観点となってきた。その柱として企業は、従業員との相互理解や信頼関係を深める〝従業員エンゲージメント〟に注目し始めている。
▼エンゲージメントは婚約など、強い結び付きを意味する。片思いでなく、双方の信頼関係があって成り立つ。単なる仲良しの関係性を意味しない。仕事をせず家事を怠れば、結婚生活は成り立たない。企業も同様に単なる〝仲良しクラブ〟では、業績は向上しない。小紙5月16日号8面の対談記事で言及した点でもある。
▼責任を取らない、取る気さえもない〝責任者〟の下では、優秀な人材は育たない。誰でもできる単純作業で「ゴマスリをしていれば優遇してくれるから、楽なものだ」などと上司を見下し、バカにする状況に陥る。企業の描くビジョンやミッションに共感し、個々が役割を自覚して仕事に臨んでこそ、従業員と企業の思いが一つになる。従業員エンゲージメントが低ければ、在宅でも出社してもサボる人はサボり続ける。逆も真なり。
▼関西大学の研究によると、我が子と生涯で一緒に過ごせる累計時間は母親が7年半、父親は3年4カ月に過ぎないという。無駄にダラダラと仕事のフリで無為な時間を過ごすならば、家族と過ごす時間は減る。仕事だけでなく〝家族エンゲージメント〟も低下する。意味のない人生で終わる。