日本の抱える問題と家によるソリューション
第1回の寄稿文では日本の抱える課題の処方箋として、スマートホームがもたらすメリットについて説明させていただきました。今回は、それらの解決にとって、「プラットフォームがいかに重要となるか」についてお話しできればと思います。
第1回の振り返りとなりますが、新型コロナウイルスやSDGs、少子高齢化社会の到来など、日本には解決すべき課題が山積しています。スマートホームによるそれらへの解決策として「UIの非接触化」や「スマートなエネルギー管理」、「センサーを利用した独居老人の見守り」などが挙げられます。
これらは優れたハードウェア(設備や機器)さえあれば実現できるソリューションだと思われがちですが、実はプラットフォーム(共通の土台)がしっかり備わっているからこそできるソリューションなのです。
ハードからプラットフォームの時代へ
例えば、みなさんが使っているプラットフォームの1つとしてスマートフォンのOSが挙げられます。スマートフォンのOSがあることで、様々な企業が作成したアプリケーションを簡単に利用することができます。これが各社様々なOSであれば、非常に不自由な使い方しかできなかったはずです。
これを家の中の話に当てはめてみましょう。家のアプリケーションは家電や空調などの設備に当たりますが、それらは共通のOSで制御されているとは言えず、様々なメーカーが作った機器が連携することなく家の中で使われています。それらを共通のOSのようにプラットフォームで制御することで、暮らしにおけるUXが大きく向上していくものと私は考えています。
プラットフォームはハードをつなぐ土台
最近日本でもスマートホームを事業化する企業が増えて、多くのハードが世に出回るようになりました。しかしながら、それらの多くの会社はスマートロックや見守りセンサーなど、デバイスのみを開発している会社がほとんどです。個々で見れば非常に優れたデバイスばかりですが、それらの多くはその会社独自のソフトウェアでしか使えない設計になっています。
例えば、鍵は鍵アプリ、見守りセンサーは見守りセンサーアプリ、スマートライトはスマートライトアプリといった具合にです。一見するとあまり困らないのでは?と思われがちですが、スマートホームでは機器同士の連携が何より重要になります。
個々のハードのみに注目していると、結局それぞれのアプリでそれぞれの機器を操作するといったような使い方しかできなくなります。
これがプラットフォームであれば、そこに属するデバイス同士は自然に連携するように設計されており、メーカーの違う複数のデバイスや機器を好きなように連動させ、一つのスマートホームサービスとして、居住者が抱える個々の問題や望みを叶える住空間を作り上げることができるのです(イメージ図)。
例えば、部屋に設置した環境センサーが熱中症の危険のある温度や湿度を検知し、カーテンを閉めてエアコンをつけ、スマートスピーカーが知らせてくれる。このように生活を一段便利にするような機器同士の連携は、共通のプラットフォームの上に作られたスマートホームでしか体感できないものです。
ハードのみがインターネットにつながってIoTとして使え、それが喜ばれる時代はもう終わっています。ハードではなく、プラットフォームが求められる時代がすでに来ています。
既に、アメリカのスマートホームサービスにはプラットフォーマーがおり、消費者は様々なデバイスを1つのサービスとしてシームレスに利用することができるのです。
日本においてもハード開発だけではなく、あらゆるデバイスをシームレスに繋ぎ、見守りや子育て、セキュリティなど、日本の住空間の問題解決につながるスマートホームに特化したプラットフォームの発展が鍵を握っていると思います。