紙上ブログ 不動産屋の独り言 767 賃貸現場の喜怒哀楽 坂口有吉 義理堅い女性入居者の退去 入去時から変わらぬ親切心で
住宅新報 2024年9月3日 号 6面

時折義理堅い入居者に出会うことがある。その女性は、週に何度か介護の仕事で働いているが、母子家庭で生活保護を受けている。なのに引っ越しの立ち会い時に私と家主に菓子折を持ってきた。「今まで大変お世話になったから」と言うが、それは逆。8年前にその部屋を借りてくれたが、前入居者が孤独死。発見されたのが1カ月半後で、いわゆる事故物件だった。相当に家賃を下げても次の入居者は決まらないだろうな、と思っていたら、「私は平気です。どの部屋で亡くなっていたのですか。私がその部屋を使います」とまで言う。それは本当にありがたかった。
気配りの人
家賃も役所から直接当社に振り込まれてきたし、滞納は一度もない。「何かあったら誰かが助けてくれて当たり前」という勝手な価値観もない。「あそこが具合悪い、ここを直してほしい」なんて話も一度もなかった。それどころか、季節の変わり目には「体調はいかがですか。お体に気を付けてくださいね」と電話をくれる。何かの用事のついでに、というのではないから心がこもっている。





















