紙上ブログ不動産屋の独り言608 賃貸現場の喜怒哀楽 坂口有吉 心の病を抱える入居者からの電話 本人の希望通りにするべきか
住宅新報 2021年6月22日 号 6面
今から15年ほど前の話。当時賃借していた物件が老朽化していて立ち退くことになった老姉妹が、私が書いた本を読んで「絶対に次の部屋探しはこの不動産屋に」と決めて連絡をくださり、そのご縁で現在、当社管理の部屋にお住まいの女性がいる。お姉さんは長く寝たきりだったが、一昨年他界し、今は妹さんが一人住まい。昼間でも雨戸が開くことはなく、週に2度、ヘルパーさんが訪れる以外は誰も来ないし、家から出ることもない。私も家主宅を訪問する際に必ず声を掛けるようにしているが、いつもインターホン越しの会話。「こめんなさい。体調が悪いもので玄関まで出ていけません」と言っていて顔を見ていない。
「姉は宝物」
なぜ、そんなに体調が悪くなってしまったかと言えば、お姉さんを亡くしたから。お兄さんもいるようだが行き来がなく、彼女にとってはお姉さんが最愛の人。お姉さんと暮らすために結婚もしていない。私にも「姉は私にとって宝物のような人。姉のいない人生なんて考えられません。私は心臓の病気も持っているので、もしも姉が亡くなったらショック死してしまうかもしれません」と言っていた。それくらいだから生きてはいるけれど今は〝生きる屍(しかばね)〟という感じ。ヘルパーさんは少し離れた町から来てもらっていて市のケースワーカーではなく自己負担。自分が死んだらどうするか、どう片付けるかは、すべてヘルパーさんに頼んである、とのこと。私も連絡を取っていて、そのことでは安心している。























