紙上ブログ不動産屋の独り言615 賃貸現場の喜怒哀楽 坂口有吉 他社なら断ったであろう依頼1 部屋から一歩も出られない入居者
住宅新報 2021年8月17日 号 7面
朝6時過ぎに携帯が鳴った。入居者である高齢婦人からだった。いつも4時起きだから別に構わないのだが、「坂口さん、頼まれてほしいことがあるんだけど…」と泣きそうな声で言う。「どうしたの?」と聞くと、「私の委任状を持って郵便局に行ってお金を下ろして、別の通帳に移してほしいの。でないと月末に家賃が払えなくなってしまうから。お願いできるかなあ」とのこと。電話をしてきたのが24日で自動振り替えになるのが28日。それまでの間に予定が入っていないのは、電話をしてきた24日のみ。その高齢婦人は心の病を持っていて、部屋からは一歩も出られない。週に何度かケースワーカーは訪れているが、ケースワーカーはお金に関してはタッチできないルールになっているんだとか。それで私に頼んできたのだが、私の店から高齢婦人のアパートまでは電車とバスを乗り継いで1時間は掛かる。
再度郵便局へ
他に頼める人はいない、と分かっているので引き受けて、昼前に到着するように出掛けてアパートで委任状と印鑑を受け取り、片道1キロくらいの所にある郵便局に行き、窓口でお金の引き出しを依頼すると、「通帳の記号番号と下ろす金額は本人が直接書いていなければ無効です」とのことで、またアパートに戻って記入してもらい、再び郵便局へ。どうにかお金を下ろして別の通帳に移し替え、それで家賃は払えることになったのだが、問題は来月からどうするか、という話。家主は「私が行ってもいいですよ」とおっしゃるが、高齢だし、そんなお使いなど頼めない。























