紙上ブログ不動産屋の独り言696 賃貸現場の喜怒哀楽 坂口有吉 近所のアパート取り壊しで、移転先探し 有難いが、こんな話は聞いたことがない
住宅新報 2023年3月28日 号 6面

当社の近所のアパートが老朽化のために取り壊しすることになった。2DKが6世帯で、入居者はほとんどが高齢者。何人かが当社に部屋探しを依頼してきたが、生活保護受給者もいて、引っ越すためには今と同じ広さが必要になる。「引っ越す際に、ある程度の荷物は処分したほうがいいですよ。今と同じ家賃でこの辺りに2DKの部屋はありません。一人暮らしなら1DKとか、広めのワンルームでもいいでしょう」と言ったのだが、みんな「荷物は減らせない」と言う。少しは妥協してくれないと部屋探しは困難になる。
高齢男性と契約 「今のアパートは部屋が縦につながっていて、手前の部屋は使わなくなってしまうから振り分けタイプがいい」とも言う。それやこれやで、希望条件をすべて満たそうと思ったら紹介できる部屋はない。それでも、88歳の高齢男性の部屋はどうにか当社の管理物件で申し込みが入った。2Kで日当たりは良くないが、家賃的に言えばそれが限界。保証会社の審査も通り、契約することになった。その男性は当社にじかに飛び込んで来た客ではなく、家主から取り壊しの依頼を受けている不動産会社から紹介を受けたもの。部屋探しには担当者も一緒に来て、こんなことを言う。
「もし部屋が決まりましたら、当社から御社にADを出しますので」と言うのだ。「ADは管理会社から客付け業者に対して支払うものでしょう。どういうこと?」と聞くと、「うちは、今の入居者の方がいい部屋を見つけて早く明け渡してくださると助かりますので、その謝礼です」と。























