紙上ブログ不動産屋の独り言706 賃貸現場の喜怒哀楽 坂口有吉 一歩間違えば殺されていたかも 高齢婦人の自宅に泥棒
住宅新報 2023年6月6日 号 6面

私の家から店に向かう途中に85歳の老婦人が暮らす小さな貸家がある。毎朝、私が出勤する際には玄関の様子を見て異常はなさそうかチェックしている。ゴミが出されているか、郵便受けがあふれていないか、横目で見て確認して店に向かう。時にはチャイムを鳴らして本人と直接会うこともある。それも私の仕事。玄関はガラスの引き戸で昔風の作り。その日も在宅のようだったから声を掛けることにした。チャイムを鳴らすと、「はい」と元気な声が帰ってきて老婦人が出てきたのだが。
鉢合わせせず
「いつもありがとうね。一昨日、寝る時に玄関のカギをかけ忘れて、泥棒に入られたのよ。私は全く気が付かなくて寝てたんだけど、台所の棚に置いてあった10万円を盗まれちゃって。次の日に犯人が隣町で捕まって、私のところにも入った、って警察で言ったから私が通っているスポーツジムに電話があって『調書を作りたいから協力してほしい。〇〇警察署まで来てもらえないか』って言うのよ。私が『そんなところまで行けない』って言ったら『迎えに行きます』ってパトカーで迎えに来てくれて、私はこの歳まで生きてきて初めてパトカーに乗ったのよ」と明るく話す。その月の生活費を盗まれたのにパトカーに乗ったことを、まるでテーマパークの人気アトラクションに初めて乗ったかのように喜んでいる。























