子供の頃に母親から「打ち寄せる波と、焚き火の炎をジッと見てはいけない」ときつく注意された事があります。理由を聞くと「バカになるから」とのことでしたが、確かにどちらもジッと見ていると、時を忘れ、軽い催眠現象が起きるようです。波を見つめた後、海に向かって「バカやろ~」と叫びたくなるのは、まさしくバカになったのかも知れません。炎の場合、引き込まれるのは、炎の揺らめきだけではなく、火という物が原始的な本能に訴えかける力を持っているからであり、それは癒しの効果もあります。この「癒し力」と採暖効果を住まいに取り込むのが暖炉です。
バブル時代に大手ディベロッパーの販売する高級マンションに暖炉を設置するのが流行りました。筆者が懇意にしている暖炉業者によれば、麻布の超高級低層マンションに暖炉を設置して、一年後メンテに行ったところ、実際に使った形跡のあるのは20軒のうち1軒だけで、他は物置き場や熱帯魚の水槽置き場になっていたそうです。使っていた1軒も焼却炉としての利用で、ビニールやプラスチック、新聞紙などを燃やしたため、煙道がすすだらけだったとか。
カタログ映えする暖炉ですが、実際に使うとなると薪の手配や保存、灰の処理など結構手間がかかるので、使用人でもいない限り、超高級マンションには無理な装備と言えます。設置したデベ側にも暖炉のある生活などした事がない担当者が、豪華なイメージだけを求めて話を進めたようです。
























