社説 オフィス、働く場の価値を磨け AI時代、足元の好調に安住するな
住宅新報 2026年8月25日 号 2面
連載: 社説「住宅新報の提言」

オフィスは、何のためにあるのか。人工知能(AI)が急速に仕事のあり方を変えようとしているいま、改めて考えるべき問いである。ビルを供給する側も、どれだけ多くの床をつくるかではなく、そこで働く人にどんな価値を提供できるのかを考える必要がある。
東京のオフィス市場は好調だ。コロナ過には、在宅勤務の広がりを背景に「オフィス不要論」さえ語られた。それを思えば、隔世の感があるものの、単に人々が職場に戻ったと見るだけでは変化の本質を捉えられない。企業の間では、「社員が行きたいと思う場所をどうつくるか」という発想が広がっている。オフィスの存在意義が問われ始めているのだ。その一例が、仕事内容に応じて働く場所を選ぶABW(アクティビティー・ベースド・ワーキング)だ。KDDIが2025年に移転した東京・高輪の本社では、固定席を前提としない。これまでオフィスの価値は、立地や賃料、床面積、設備といった条件で測られることが多かったが、今後は、社員同士の交流を促せるか、健康で快適に過ごせるか、自宅では得られない経験を提供できるかといった、働く人の視点が重要になる。
足元の市場の強さを将来にそのまま投影することはできない。大きな変化をもたらしかねないのがAIである。米国ではコロナ禍をきっかけに広がった在宅勤務が日本以上に定着し、高い空室率が続き、そこにAIの普及が重なれば、企業が必要とする人員や床面積にも影響が及ぶ可能性がある。















