酒場遺産 ▶146 亀戸 伊勢元 「亀戸に残る昭和の酒場
住宅新報 2026年8月25日 号 11面
連載: 酒場遺産

亀戸駅へ向かう途中、亀戸香取神社の隣に「伊勢元」という酒場の暖簾(のれん)が目に入った。弾簾を潜ると、燻し銀の酒場空間が立ち現れた。店は思いのほか小さく、L字カウンターに8人ほど座れば一杯になる。筆者はひとつ空いていた端の席に座ることができた。カウンター前の壁には、手書きの酒と料理の短冊が所狭しと掛かっている。近所に住んでいるらしい常連たちは、この店を心から愛していることが、女将とのやり取りから伝わる。隣席の女性が話しかけてきて、最近の物価高、親世代との価値観の差、住居費の高さなど、日々の切実な話をする。こうしたところも下町酒場の嬉しいところだ。カウンターの向こうでは珍しい黄金色のハイボールを飲んでいる客がいたので、女将に聞けば「あれは下町の酎ハイボールです」と言い、焼酎と梅酢を割った黄金色の液体をグラスに注いでくれた。これをソーダで好みの濃さに割る。390円と安い。今夜は食事の後だったので、シラス下ろし、ニラ玉、自家製漬物など軽く頼んだ。
















