随想タウンウオッチ(38) 不動産鑑定士横須賀博 待ち合わせの場所
住宅新報 2016年1月26日 号 9面
私の事務所は千代田区岩本町内の狭い小さなビルではあるが、東南の角地に位置している。角地なるがゆえに何かと便益を享受しているが、選挙の時期になると各党の候補者の選挙演説の場となり、それが騒音となって仕事にならない。しかし、日照時には明るく、冬場は暖かいために高齢者の私には健康的な建物と自画自賛している。
そんな場所であるためか夕方の5時を知らせるチャイムの時間を過ぎると数人の男女がその角地に立って誰かを待っている様子が見受けられる。いわば待ち合わせの場所になっているのである。
ここはその昔、上野不忍の池にも劣らない大きな池があった。ほとりの茶屋に「お玉」という看板娘がいたが、二人の男に求愛され悩んだあげく池に身を投じてしまい、それ以降、「お玉が池」と呼ばれるようになったという。池は江戸時代前期に埋め立てられ現在は影も形もない。そんな故事を胸に、待ち合わせの男女を眺めながらその恋愛がめでたく成就し、願わくばお玉さんのような悲劇を繰り返さないようにと願っている。























