相続法改正と不動産 5回 遺言 (上) 全国貸地貸家協会専務理事・耶馬台コーポレーション社長 宮地忠継
住宅新報 2020年11月17日 号 8面

遺言は問題が山積
斎藤一郎氏は80歳だが、大企業のサラリーマンを勤め上げ悠々自適の生活を送っていた。豊島区の目白3丁目に自宅がある。目白駅まで徒歩2、3分。100坪の土地は時価2億円を下らない。妻は既に亡く、長男の治夫(37)、長女の澄子(30)がいる。それぞれ結婚するまでは目白の家に住んでいた。
一郎氏は最近認知症の傾向が出てきていて、このところそれがひどくなってきた。治夫はよく目白の家に行っていたので、最近の様子から介護施設に入れるしかないと判断した。澄子も了承し、調布市の施設に入れたが、3年ほどして一郎氏は亡くなった。遺産は目白の家と銀行預金1000万円だ。澄子は相続のことは治夫に任せていたが治夫から連絡があった。目白の駅前の喫茶店で2人は会った。「どんな話?」と澄子が話しかけた時に、治夫はポケットから大切そうな封筒を出しその中から紙を出した。「これが出てきたんだ」それを見て、澄子は「あ!」と声をあげた。『遺言状 私は豊島区目白3丁目の自宅を斎藤治夫に相続させる。三井住友銀行の預金を井上澄子に相続させる。平成27年4月1日 斎藤一郎 印』。字は明らかに父親のものだ。「目白の家を整理していたら出てきたんだよ」と治夫はやや申し訳ないように言った。「5年前のまだ意識もしっかりしている時書いたみたいだね」























