この地上において今 住まいが未来を語り始めた ◇29 住宅評論家 本多信博 もう「入居者」とは呼べない 借り手のエージェントは誰か
住宅新報 2021年2月16日 号 11面

シェアハウスでは新人の入居歓迎会が行われることが多い。生活ルールもみんなで決めるなど一般の賃貸住宅が参考にすべきことは多々ある(写真提供=日本シェアハウス協会)
「空室あり」「入居者募集」という表示をいまだにアパートの壁などに見る。「入居者募集」はタクシー会社や鉄道会社が「運転手募集」と呼び掛けるのと同じ感覚だ。
「運転手募集」のほうは、会社が職種を明確にして社員を募集するための表示と理解することができるが、賃貸住宅のオーナー・経営者にとって、入居してくれる人は社員ではない。まさに「お客」であるので、例えば居酒屋が店の前に「空席あり」「酒飲み募集」と書くぐらいあり得ない表現である。「入居者募集」は賃貸住宅業界がいまだに昔の〝貸し手市場〟だった頃の感覚から抜け出せていない何よりの証拠である。
住宅購入が人生最大の買い物なら、家賃は毎月最大の消費である。にもかかわらず、私の経験では何年も住んでいたアパートや賃貸マンションを退去するときに、オーナーから「長い間、ありがとうございました」という謝意を示されたことがない。こんなところにも、賃貸住宅業界が真のサービス業になっていないことがうかがえる。























